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<事案の概要> アメリカ人マクリーン(上告人)は、1969年5月10日、1年の在留許可を得て入国したが、翌年5月1日、1年間の在留期間更新を申請した際、不許可の処分を受けた。その理由は、以下の2点である。 ア 在留期間中の無届転職:上告人は英語教師として入国を認められたが、当初届出ていた英語学校教師を十数日で辞めて、別の英語学校に転職した。 イ 在留期間中の政治活動:上告人は「外国人べ平連」」(「ベトナムに平和を!市民連合」の略称)に所属し、その集会に9回参加したほか、その他の集会やアメリカ大使館への抗議、あるいはデモ行進にも14回参加した。ただし、この政治活動は平和的行動であって、上告人の地位も特段、指導的・積極的なものではなかったことが明らかにされている。 <判例の構造> 論点はアであり、この点に関する判例の構造は、以下のように整理できよう。 政治活動(憲法21条で保障される表現の自由) ⇒外国人にも性質上保障が及ぶ。 ↓ 在留期間の更新拒絶(法務大臣の裁量) ⇒政治活動の自由が外国人に保障されるとしても、 法務大臣は、その裁量として、 当該政治活動を在留期間の更新の許否に関して斟酌して差し支えない。 ↓ 在留期間の更新拒絶の裁量的判断の正当性 ⇒当該政治活動が「日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえない」 ⇒上告人は「将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者」と認められる このような法務大臣の判断が明白に合理性を欠くとはいえない <批判的考察> (1)外国人に政治活動の自由(表現の自由)が保障されると言っておきながら、法務大臣の裁量で国外退去を強いることを許容している点で、結局、「残念でした」とばかりに、法務大臣の裁量による制限を許容している。 (2)法務大臣の裁量的判断の対象は、あくまで「在留期間の更新の許否」についてであるとしても、結果的には、外国人の政治活動の自由(表現の自由)を制限していることにかわりはない。 (3)法務大臣の判断は、「影響を及ぼすおそれ」「利益を害する行為を行うおそれがある」といった、極めて抽象的な基準である。結果的には、このような基準でもって、政治活動の自由(表現の自由)を制限することを肯定している点で、外国人の表現の自由が容易く制限することができてしまう。 <判旨抜粋> (1)在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からであると解される。 (2)思うに、憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。 (3)しかしながら、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であって、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。 (4)上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリカ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとって好ましいものではないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。 (澤田章仁) |
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