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help リーダーに追加 RSS 【14】「石に泳ぐ魚」事件(最判平成14年9月24日判決)−曽我部真裕助教授の論点整理−

<<   作成日時 : 2007/04/03 02:09   >>

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<事案の概要>
上告人Y1が執筆した小説(「石に泳ぐ魚」)のモデルとされた女性(被上告人X)は、顔面に大きな腫瘍があり、また父親には逮捕歴があった。被上告人Xは、この小説の発行等によって、Xを知る周囲の者にこの事実が知られることとなったため、名誉を毀損され、プライバシー及び名誉感情を侵害されたとして、上告人Y1らに対して慰謝料の支払を求めるとともに、上告人Y1及び同小説の韓国版の出版についての権限を有する上告人Y2に対し、同小説の出版等の差止めなどを求めた。

<論点>
□小説論(小説はあくまで小説とする考え方)と名誉やプライバシー侵害に関する法律論との関係→本件では判断なし
□モデルとされた人物が高名な人物ではなく市井の一般人である場合でもプライバシー権侵害の問題は生じるか?→モデルの特徴・言動と結びつく限り、少数の知人等が知ることができる→(2)参照。ただし、この点についての判断は不明確
□芸術性の昇華は権利侵害を減殺し得るか?→本件では判断なし(→このような判断自体「法律上の争訟」から外れるのではとの指摘あり・棟居快行)
□身体的特徴(外界からの認識可能な事実)はプライバシーに該当するか?→本件では判断不明確(→「むやみに社会的評価にさらされることのない自由」という意味でのプライバシーに該当するとの指摘あり・棟居快行)
□出版差止の要件→利益衡量論か?→(1)参照


<澤田コメント>
本件はリニューアルした「憲法判例百選(第5版)」の69事件である。この解説の執筆担当は京都大学曽我部真裕助教授である。同助教授は、この解説の中で、従来からあまり論点とされてこなかった以上の論点を、斬新かつ詳細に整理しておられる。是非、一読されたい。

憲法判例百選 1
高橋 和之編 / 長谷部 恭男編 / 石川 健治編
有斐閣 (2007.2)
通常24時間以内に発送します。


なお、曽我部助教授は、近日発行のジュリスト臨時増刊『平成18年度重要判例解説』でも執筆を担当されている。斬新かつ明快な曽我部助教授のアングルは期待を裏切らないはずである。

<判旨>
(1)人格的価値を侵害された者は,人格権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは,侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ,予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである。そして,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである。
(2)被上告人は,大学院生にすぎず公的立場にある者ではなく,また,本件小説において問題とされている表現内容は,公共の利害に関する事項でもない。さらに,本件小説の出版等がされれば,被上告人の精神的苦痛が倍加され,被上告人が平穏な日常生活や社会生活を送ることが困難となるおそれがある。そして,本件小説を読む者が新たに加わるごとに,被上告人の精神的苦痛が増加し,被上告人の平穏な日常生活が害される可能性も増大するもので,出版等による公表を差し止める必要性は極めて大きい。
(3)原審の確定した事実関係の下において,原審の上記各判断がいずれも憲法21条1項に違反するものでないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和41年(あ)第2472号同44年6月25日大法廷判決・刑集23巻7号975頁,最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)の趣旨に照らして明らかである。

 澤田章仁

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