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<本法の制定経緯> 最近におけるテロ資金その他の犯罪収益の流通に係る国内の実態及びFATF(Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会)「40 の勧告」が平成15 年6 月に改訂され、それまで金融機関が講ずべきこととされてきた本人確認や疑わしい取引の届出義務等の措置が、不動産業者・貴金属商・宝石商等の特定の非金融業者、および弁護士・司法書士・税理士等の特定の資格士業にも義務付けられることになった。このような国際的な動向にかんがみ、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下「犯罪収益移転防止法」という。)が、平成19 年2月13 日に国会に提出され、同年3月29 日に可決成立し、同年3月31 日に公布された。なお、施行に関しては以下のとおりである。 (1)平成19年4月1日から施行(附則1条本文)。 (2)本人確認(4条参照)・本人確認記録又は取引記録の作成又は保存義務等(6条乃至7条参照)・これらに対する罰則の適用等については、本法施行日から政令で定める1年以内の日(附則1条1号)。 第1 目的(1条関係) ◆犯罪収益は、次のような助長効果を持つ。 →組織的犯罪の助長 →健全な経済津活動への重大な悪影響 →ロンダリングにより追徴・没収等が困難 ◆そこで、以下のような手段(立法目的達成のための手段)を用い、 特定事業者(司法書士は特定事業者に該当・2条2項40号)による ア 顧客等の本人確認 イ 取引記録等の保存 ウ 疑わしい取引の届出 ◆もって、以下のような立法目的を達成する。 ア 犯罪収益移転防止 イ テロリズムに対する資金供与防止に関する国際条約の的確な実施 ウ 国民生活の安全と平穏を確保 エ 経済活動の健全な発展に寄与 第2 本人確認の範囲(4条関係) ◆特定事業が司法書士の場合 ア 主体・・・司法書士又は司法書士法人 イ 客体・・・クライエント ウ 取引・・・司法書士法3条若しくは29条に定める業務又はこれに付随 関連する業務のうち、次の業務(特定業務)。 @宅地又は建物の売買に関する行為 A会社の設立又は合併、会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続 B現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分 ↓ 以上に関する「特定受任行為の代理等を行うことを 内容とする契約の締結その他の政令で定める取引」 (特定取引)。 エ 内容・・・本人特定事項の確認 @自然人の場合 (1)氏名 (2)住所 (3)生年月日 A法人の場合 (1)名称 (2)本店又は主たる事務所の所在地 (3)代表者又は担当者の@に関する事項 B国・地方公共団体・人格のない社団又は財団等 →特定取引の任に当たっている者を自然人とみなして@に関する事項 ◆特定事業者の義務履行の拒絶権 顧客等が以上の本人確認に協力しないときは、特定事業者は特定取引にかかる義務履行を拒むことができる(5条)。 ◆顧客等に対する罰則 顧客等は、特定事業者に対し、本人確認に関する内容を偽った場合、50万円以下の罰金に処せられる(25条)。 第3 本人確認記録等の作成及び保存義務(6条及び7条関係) ◆本人確認記録の作成及び保存義務の概要 特定事業者は、本人確認を行なった場合、直ちに、主務省令(司法書士の場合は法務省令)で定める方法により、下記内容を記録した「本人確認記録」を作成しなければならない(6条1項)。 @本人特定事項 A本人確認のためにとった措置 Bその他主務省令で定める事項 また、特定事業者は、特定取引が終了した日から「7年間」、「本人確認記録」を保存しなければならない(6条2項)。 ◆取引記録の作成及び保存義務の概要 司法書士等の士業関係の特定事業者は、少額な事件を除き、特定受任行為の代理等を行った場合には、直ちに、主務省令(司法書士の場合は法務省令)で定める方法により、下記の事項に関する記録を作成しなければならない(7条2項)。 @本人確認記録((1)参照)を検索するための事項 A特定受任行為の代理等を行った期日 B特定受任行為の代理等の内容 Cその他主務省令で定める事項 また、特定事業者は、当該特定受任行為の代理等が終了した日から「7年間」、「取引記録等」を保存しなければならない(7条3項)。 <保存期間7年の理由> テロ資金供与防止法第2条の資金等提供罪の公訴時効が7年であり、これに合わせたものと説明されている(警察学論集第60巻第7号38頁)。 ◆弁護士又は弁護法人の適用除外 弁護士又は弁護法人には、(1)及び(2)は、すべて日弁連の会則で定める(8条1項)。これは、日弁連に行政庁の監督が及ばないこと、弁護士の重要な業務に刑事弁護があること等の事情による。なお、日弁連はこれに対応するため、既に「身元確認及び記録保存等に関する規程」(平成19年3月1日会規第81号)を定めている。 第4 疑わしい取引の届出(9条乃至12条関係) 弁護士等は8条により、その他の資格士業は9条1項により、「疑わしい取引」の届出義務の適用は、その主体としては、除外されている。 しかしながら、金融機関その他の特定事業者には、「疑わしい取引」の届出義務があるため、その客体として、届け出られる可能性がある。この届け出は、特定の行政庁(20条参照)を経由して主務大臣に通知され(9条3項)、特定の行政庁又は主務大臣は、速やかに、これを国家公安委員会に通知するものとされている(9条4項)。 第5 行政庁・国家公安委員会の権限等(13条乃至19条関係) ◆行政庁の権限 (1)行政庁は、特定事業者に対し、本法の施行に必要な限度で、以下の権限を行使できる。 @報告又は資料の提出を求めること(13条)。この点については国家公安委員会による行政調査と異なり、一斉報告や定期報告を求めることも可能と解されている(警察学論集第60巻第7号39頁)。 A営業所その他の施設に立入り、帳簿書類その他の物件を検査し、質問すること(14条1項)。なお、この立入検査の権限に関しては、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とされている(14条3項・「行政調査権」の概念)。 <罰則> 上記の義務の拒絶又は違反行為に対しては、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科(24条1号)。なお、法人の場合は、2億円以下の罰金(27条2号)。 (2)特定事業者に対する必要な指導、助言及び勧告をすること(15条) (3)特定事業者が、第4に揚げた義務(本人確認及び取引記録の作成及び保存義務)等に違反する場合、その是正のための必要な措置をとること(16条)。 <罰則> (3)の是正義務の違反行為に対しては、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科(23条)。なお、法人の場合は、3億円以下の罰金(27条1号)。 ◆国家公安委員会の権限 (1)特定事業者が、本人確認(4条参照)・本人確認記録又は取引記録の作成又は保存義務等(6条乃至7条参照)に違反しているときは、次の措置に関して、意見を述べることができる(17条1項)。 @行政庁は、特定事業者に対し、是正措置(命令)を行なうべき旨 A他の法令の規定により当該義務違反を理由として業務の停止その他の処分を行なうことができる旨 (2)(1)の意見を述べるのに必要な限度で、特定事業者に対し、次の権限を有する(17条2項)。 @報告又は資料の提出を求めること A都道府県警察に必要な調査を行なうことを指示すること (3)(2)の指示を受けた都道府県警察は、国家公安委員会の承認を得て、次の権限を有する(17条3項)。 営業所その他の施設に立入り、帳簿書類その他の物件を検査し、質問すること。なお、この立入検査の権限に関しては、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とされている(17条3項後段・14条3項を準用)。 <罰則> (2)(3)の義務の拒絶又は違反行為に対しては、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科(24条1号・同2号)。なお、法人の場合は、2億円以下の罰金(27条2号)。 |
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