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路上から見た、小さな憲法。

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路上に目線を下ろして見る。
すると、重要な憲法問題がすぐそこに転がっていることに気がつく。
そして、地に足のついた憲法論がいかに重要なのかということに気がつく・・・。
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国籍法3条による国籍取得要件の違憲判決の尊重を求める声明

2008/07/17 21:30
 最高裁判所平成20年6月4日大法廷判決(国籍法3条違憲判決)を受けて、全国青年司法書士協議会(全青司)が標記の会長声明を出しました。
 この判決のポイントは、父親が日本人で母親が外国人の場合に、父母が婚姻していなくても「胎児認知」があれば子は生来的に国籍を取得するのに対し、「生後認知」であれば、父母が婚姻してなければ、子は国籍を取得することができないと定める国籍法が、憲法14条に反するとした点です。
 もちろん、立論としては、婚外子差別の問題としてとらえることも可能ですが、今回の判決では、そこは問題とされておりません。
 外国籍の方々の人権については、できる限り広く保障が及ぶように解釈する憲法学説が大勢を占めるようになってきましたが、それでもまだまだ「国籍」の有無は、人権保障の上で重要な要素となっているのが現状です。
 そのような中で、国籍を取得しやすくする解釈・運用は、人々の夢や希望の実現(就きたい職業に就く・取得したい資格を取得する、など。)のために、非常に意味のあることだと思います。
 是非、この会長声明をご一読下さい。



      国籍法3条による国籍取得要件の違憲判決の尊重を求める声明

全国青年司法書士協議会

声明の趣旨
1 我々は、立法府に対し、胎児認知か出生後の認知かを問わず、父の認知により子ども(満20歳未満の者)に国籍が認められるよう、国籍法の早急な改正を求める。
2 我々は、関係行政機関に対し、上記国籍法改正に至るまで、父の認知を受けた子の届出による国籍取得を認める措置を早急に講じることを求める。

声明の理由
平成20年6月4日、最高裁判所大法廷は、婚姻をしていない日本人の父と外国人の母との間に生まれ、出生後に父から認知された子どもについて、日本国籍を有することを確認する判決を言い渡した。これまで国は、国籍法3条1項の規定にしたがい、婚姻していない日本人の父と外国人の母との間に生まれた子どもであっても、出生前に認知された子どもについては出生とともに日本国籍の取得を認める一方、出生後に認知された場合には、父母の婚姻という要件を課してきた。これにより、法律婚の有無という親の事情により日本国籍を取得するにつき子どもたちに差別的取扱いが生じていた。
子どもの健全な発達のためには、幸福、愛情及び理解ある雰囲気や環境が必要なことは言うまでもなく、社会は子どもたちのためにこれを整えなければならない。日本が批准した人権に関する諸条約においても、子どもの最善の利益を主として考慮することや、子どもは出生によっていかなる差別も受けないことを規定している。今回の判決は、こうした国際条約を尊重すべきとし、国籍法3条1項の規定は、合理的な理由のない差別的取扱いを生じさせており、憲法14条1項の平等保障に反して違憲であると判断した画期的な判決である。
今回の判決が出された翌日において、法務省としては国籍法3条の改正を検討することを明らかにした。また、同日法務省民事局が全国の法務局に、今回の判決と同様の問題を抱えた子どもから国籍取得申請があった場合には申請書を預かるよう指示した。我々はこれらの対応は迅速なものとして評価する。
しかしながら、現在においても立法の不作為状態が存在し続けていること及び国籍取得申請書を提出してもすぐには受理されないことは事実である。国籍の有無は、現在でも我が国における基本的人権の保障に関して影響を及ぼす重要な要素であり、夢や希望の実現、ひいては明日のくらしにも影響を及ぼす問題に直結している。子ども達の成長は早く、その心についても大人とは比べものにならないほど感受性が高く、社会の影響を受けやすい。したがって、国籍の取得にかかわる国籍法3条1項が違憲であると確認された以上、この部分をこのまま放置しておくことは許されない。私たち大人や社会一般は、子どもたちの人権を守っていく強い姿勢を早急に見せなければならない。
よって、我々は、立法府及び関係行政機関に対し、国籍法の迅速・早急な改正を求めると共に、改正前であっても臨時措置を講ずるか、または新たな解釈・運用を示す等により、今回の判決の原告と同様の境遇にある子どもたちに対し、速やかに日本国籍の取得を認めるよう強く求めるものである。
以上
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犯罪収益移転防止法に基づく本人確認・取引記録作成義務等

2008/02/05 17:17
 司法書士は本法の適用を受ける特定事業者に該当するとされ(法20条2項40号)、司法書士法3条・同29条所定の業務(付随関連する業務含む。)のうち、

 (1)法4条1項所定の「特定受任行為の代理等」(=特定業務・例えば宅地の売買による所有権移転登記の代理など)に該当する場合は、取引記録の作成及び7年間の保存義務が生じ(法7条2項)、

 (2)法4条1項所定の「特定受任行為の代理等を行なうことを内容とする契約の締結等」(=特定取引・例えば宅地の売買による所有権移転登記の代理に関する「委任契約の締結」など)を行なう場合には、本人確認義務(法4条)及び本人確認記録の作成ならびに7年間の保存義務が生じる
こととなった(法6条)。

 以下に、犯罪収益移転防止法施行令ならびに施行規則も含めて、司法書士の特定業務と特定取引を整理しよう。


−特定業務−
*取引記録の作成保存義務が科される場合

【法4条】
司法書士法3条(同29条含む)所定の業務(附帯関連するもの含む)のうち、下記の業務=「特定受任行為の代理等」
(1)宅地・建物の売買に関する行為又は手続
(2)会社設立・合併のほか政令で定める会社の組織・運営・管理等に関する行為又は手続(会社以外の法人等で政令で定めるもの含む)
(3)現金・預金・有価証券その他の財産の管理又は処分(上記(1)(2)以外)
  ↓
【施行令9条】
(1)以下の行為又は手続は除外
@租税・罰金・過料等の納付
A成年後見人等裁判所又は主務官庁の選任に基づく職務としての行為又は手続
(2)上記法律事項(2)で政令で定める行為又は手続とは株式会社の設立・組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転・定款変更・取締役の選任・代表取締役の選定等
(3)上記法律事項(2)の政令で定める会社以外の法人として投資信託・投資法人・特定非営利活動法人・特定目的会社・民法上の組合・匿名組合・有限責任事業組合等


−特定取引−
*本人確認義務及び本人確認記録の作成保存義務が科される場合

【法4条】
左記「特定受任行為の代理等」を行うことを内容とする契約の締結その他政令で定める取引
  ↓
【施行令10条】
(1)現金・預金・有価証券その他の財産の管理又は処分の特定受任行為の代理等については当該財産の価格が200万円以下の場合は除外
(2)犯罪収益移転利用のおそれがない取引で主務省令が定めるものは除外
  ↓
【規則6条2項】(除外取引)
@任意後見契約の締結
A国・地方公共団体の職員が権限に基づき行なう取引で国・地方公共団体の証明書等の提示を受けた取引
B破産管財人等(成年後見人・不在者財産管理人等も含む。警察庁パブコメ回答)が権限に基づき行なう取引で裁判所の証明書等の提示を受けた取引
(3)本人確認済みの顧客等との取引については除外(本人確認記録を保存していることが条件)


 なお、どのような方法や確認資料に基づいて以上の記録を作成するかについては、次回、お示しすることとしたい。
 (澤田章仁)
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「民事手続の現在」と憲法的視座 −公開シンポジウム開催

2007/12/04 09:49
「民事手続の現在」と憲法的視座
全国青年司法書士協議会主催 市民公開シンポジウム

【プログラムの概要】
第1 全国青年司法書士協議会の活動報告等
第2 棟居快行先生(大阪大学大学院高等司法研究科教授・憲法学)の講義
第3 佐藤彰一先生(法政大学法科大学院教授・民事訴訟法学)の講義
第4 棟居先生・佐藤先生との座談会

【開催趣旨・テーマ】
 裁判外紛争処理(ADR)を視野に入れて益々多様化する民事手続について、「裁判を受ける権利」や「適正手続保障」等の憲法的保障は、いかに存在し、いかに保障されるべきかを検討する。
 そのため、憲法学からは棟居快行先生、民事訴訟法学からは佐藤彰一先生をお招きして、憲法学と民事訴訟法学の直接対話を実現した。
 手続利用者の具体的人間像をいかに見て、手続そのものをどのように捉えるべきか。当番司法書士ホットライン、完全無料化したメディエーションセンターの立ち上げ、本人訴訟や消費者破産手続の現状など、全青司事業や司法書士実務の具体的な問題を踏まえて、憲法学・民事手続法学の双方から検討を深めていく企画である。

【開催要項】
(日時)
2007(平成19)年12月15日(土曜日)
午後12時30分から17時00分(12時開場)
(場所)
主婦会館「プラザエフ」
〒102-0085 東京都千代田区六番町15番地
TEL 03-3265-8111
(参加要領)
*参加資格なし(一般市民・学生・法律家等々・・・)
*参加無料・資料代無料
*事前申込不要

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犯罪収益移転防止法の概要−司法書士関連を中心に−

2007/11/14 13:51
<本法の制定経緯>
最近におけるテロ資金その他の犯罪収益の流通に係る国内の実態及びFATF(Financial Action Task Force on Money Laundering:金融活動作業部会)「40 の勧告」が平成15 年6 月に改訂され、それまで金融機関が講ずべきこととされてきた本人確認や疑わしい取引の届出義務等の措置が、不動産業者・貴金属商・宝石商等の特定の非金融業者、および弁護士・司法書士・税理士等の特定の資格士業にも義務付けられることになった。このような国際的な動向にかんがみ、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下「犯罪収益移転防止法」という。)が、平成19 年2月13 日に国会に提出され、同年3月29 日に可決成立し、同年3月31 日に公布された。なお、施行に関しては以下のとおりである。
(1)平成19年4月1日から施行(附則1条本文)。
(2)本人確認(4条参照)・本人確認記録又は取引記録の作成又は保存義務等(6条乃至7条参照)・これらに対する罰則の適用等については、本法施行日から政令で定める1年以内の日(附則1条1号)。


第1 目的(1条関係)
◆犯罪収益は、次のような助長効果を持つ。
  →組織的犯罪の助長
  →健全な経済津活動への重大な悪影響
  →ロンダリングにより追徴・没収等が困難
◆そこで、以下のような手段(立法目的達成のための手段)を用い、
  特定事業者(司法書士は特定事業者に該当・2条2項40号)による
   ア 顧客等の本人確認
   イ 取引記録等の保存
   ウ 疑わしい取引の届出
◆もって、以下のような立法目的を達成する。
   ア 犯罪収益移転防止
   イ テロリズムに対する資金供与防止に関する国際条約の的確な実施
   ウ 国民生活の安全と平穏を確保
   エ 経済活動の健全な発展に寄与

第2 本人確認の範囲(4条関係)
◆特定事業が司法書士の場合
  ア 主体・・・司法書士又は司法書士法人
  イ 客体・・・クライエント
  ウ 取引・・・司法書士法3条若しくは29条に定める業務又はこれに付随
           関連する業務のうち、次の業務(特定業務)。
    @宅地又は建物の売買に関する行為
    A会社の設立又は合併、会社の組織、運営又は管理に関する行為又は手続
    B現金、預金、有価証券その他の財産の管理又は処分
           ↓
     以上に関する「特定受任行為の代理等を行うことを
     内容とする契約の締結その他の政令で定める取引」
     (特定取引)。
  エ 内容・・・本人特定事項の確認
     @自然人の場合
        (1)氏名
        (2)住所
        (3)生年月日
     A法人の場合
        (1)名称
        (2)本店又は主たる事務所の所在地
        (3)代表者又は担当者の@に関する事項
     B国・地方公共団体・人格のない社団又は財団等
        →特定取引の任に当たっている者を自然人とみなして@に関する事項
◆特定事業者の義務履行の拒絶権
 顧客等が以上の本人確認に協力しないときは、特定事業者は特定取引にかかる義務履行を拒むことができる(5条)。
◆顧客等に対する罰則
 顧客等は、特定事業者に対し、本人確認に関する内容を偽った場合、50万円以下の罰金に処せられる(25条)。

第3 本人確認記録等の作成及び保存義務(6条及び7条関係)
◆本人確認記録の作成及び保存義務の概要
 特定事業者は、本人確認を行なった場合、直ちに、主務省令(司法書士の場合は法務省令)で定める方法により、下記内容を記録した「本人確認記録」を作成しなければならない(6条1項)。
    @本人特定事項
    A本人確認のためにとった措置
    Bその他主務省令で定める事項
 また、特定事業者は、特定取引が終了した日から「7年間」、「本人確認記録」を保存しなければならない(6条2項)。
◆取引記録の作成及び保存義務の概要
 司法書士等の士業関係の特定事業者は、少額な事件を除き、特定受任行為の代理等を行った場合には、直ちに、主務省令(司法書士の場合は法務省令)で定める方法により、下記の事項に関する記録を作成しなければならない(7条2項)。
    @本人確認記録((1)参照)を検索するための事項
    A特定受任行為の代理等を行った期日
    B特定受任行為の代理等の内容
    Cその他主務省令で定める事項
 また、特定事業者は、当該特定受任行為の代理等が終了した日から「7年間」、「取引記録等」を保存しなければならない(7条3項)。

<保存期間7年の理由>
テロ資金供与防止法第2条の資金等提供罪の公訴時効が7年であり、これに合わせたものと説明されている(警察学論集第60巻第7号38頁)。


◆弁護士又は弁護法人の適用除外
 弁護士又は弁護法人には、(1)及び(2)は、すべて日弁連の会則で定める(8条1項)。これは、日弁連に行政庁の監督が及ばないこと、弁護士の重要な業務に刑事弁護があること等の事情による。なお、日弁連はこれに対応するため、既に「身元確認及び記録保存等に関する規程」(平成19年3月1日会規第81号)を定めている。

第4 疑わしい取引の届出(9条乃至12条関係)
 弁護士等は8条により、その他の資格士業は9条1項により、「疑わしい取引」の届出義務の適用は、その主体としては、除外されている。
 しかしながら、金融機関その他の特定事業者には、「疑わしい取引」の届出義務があるため、その客体として、届け出られる可能性がある。この届け出は、特定の行政庁(20条参照)を経由して主務大臣に通知され(9条3項)、特定の行政庁又は主務大臣は、速やかに、これを国家公安委員会に通知するものとされている(9条4項)。

第5 行政庁・国家公安委員会の権限等(13条乃至19条関係)

◆行政庁の権限
(1)行政庁は、特定事業者に対し、本法の施行に必要な限度で、以下の権限を行使できる。
@報告又は資料の提出を求めること(13条)。この点については国家公安委員会による行政調査と異なり、一斉報告や定期報告を求めることも可能と解されている(警察学論集第60巻第7号39頁)。
A営業所その他の施設に立入り、帳簿書類その他の物件を検査し、質問すること(14条1項)。なお、この立入検査の権限に関しては、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とされている(14条3項・「行政調査権」の概念)。

<罰則>
上記の義務の拒絶又は違反行為に対しては、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科(24条1号)。なお、法人の場合は、2億円以下の罰金(27条2号)。


(2)特定事業者に対する必要な指導、助言及び勧告をすること(15条)
(3)特定事業者が、第4に揚げた義務(本人確認及び取引記録の作成及び保存義務)等に違反する場合、その是正のための必要な措置をとること(16条)。

<罰則>
(3)の是正義務の違反行為に対しては、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科(23条)。なお、法人の場合は、3億円以下の罰金(27条1号)。


◆国家公安委員会の権限
(1)特定事業者が、本人確認(4条参照)・本人確認記録又は取引記録の作成又は保存義務等(6条乃至7条参照)に違反しているときは、次の措置に関して、意見を述べることができる(17条1項)。
@行政庁は、特定事業者に対し、是正措置(命令)を行なうべき旨
A他の法令の規定により当該義務違反を理由として業務の停止その他の処分を行なうことができる旨
(2)(1)の意見を述べるのに必要な限度で、特定事業者に対し、次の権限を有する(17条2項)。
@報告又は資料の提出を求めること
A都道府県警察に必要な調査を行なうことを指示すること
(3)(2)の指示を受けた都道府県警察は、国家公安委員会の承認を得て、次の権限を有する(17条3項)。
 営業所その他の施設に立入り、帳簿書類その他の物件を検査し、質問すること。なお、この立入検査の権限に関しては、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」とされている(17条3項後段・14条3項を準用)。

<罰則>
(2)(3)の義務の拒絶又は違反行為に対しては、1年以下の懲役又は300万円以下の罰金又はそれらの併科(24条1号・同2号)。なお、法人の場合は、2億円以下の罰金(27条2号)。

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「全青司憲法討論フォーラム」&“追加緊急企画”「ハンセン病問題基本法の制定を求める緊急集会」

2007/10/02 23:10
フォーラム開催のお知らせ

以下のとおり、憲法フォーラムを開催する予定となっております。
どなたでもご参加頂けます。どうぞご参加下さい。

【1】タイトル
「全青司憲法討論フォーラム」
“追加緊急企画”「ハンセン病問題基本法の制定を求める緊急集会」

【2】日時
2007年11月25日(日曜日)午後13時〜午後18時

【3】会場
エル・おおさか(大阪府立労働センター)7階会議室
大阪市中央区北浜東3-14
地下鉄谷町線・京阪電鉄「天満橋」駅から西へ300m
http://www.l-osaka.or.jp/

【4】開催趣旨
 全青司は、法律家集団でありながら、戦前から戦後を通して90年にわたり長らく続けられてきたハンセン病患者隔離政策を見過ごしてきた経緯があります。私たち全青司は、このハンセン病問題に関する「司法書士の不作為」に対して謝罪と反省の念を表明し(2005年4月23日付け会長声明)、療養所への相談活動などを通じて、微力ながら謝罪と反省の念を行動に表わしてきました。
 他方、このハンセン病問題について、反省と謝罪を表明した国は、今なお、平均年齢79歳となった回復者たちが死に絶えるまで何もしない消極的な対応(いわゆる「立ち枯れ政策」)を続けており、近時、これが深刻な問題となっている状況です。すなわち、国は、らい予防法の廃止に際して制定した「らい予防法の廃止に関する法律(通称:廃止法)」を根拠に、国が「何もしない」ことを正当化し、またしても国の立法行為がハンセン病回復者の方々の人間回復・社会復帰の「壁」となるといった、過去の同様の過ちを繰り返す事態となっているのです。
 このような状況下にあって、高齢となった回復者の方々が、人生最期の闘いとして「ハンセン病問題基本法」の制定運動(「ハンセン病療養所の将来構想をすすめる会」などが中心となり百万人の署名運動などを展開している。)に取り組まれておられます。
 私たち全青司は、法律家集団として前記会長声明において謝罪と反省の念を表明した以上、この廃止法を放置し、ハンセン病問題基本法の制定運動を傍観することは許されません。
 そこで、今回、上記企画(澤田提案部分)を一部修正して、「ハンセン病問題基本法」の制定を求める緊急アピールを決議するための緊急集会を併せて企画したいと考えております。
 この集会をもって、終身絶対強制隔離政策を合法化し、差別偏見を下支えしてきた各法律を再検証し、そして回復者の方々の現状を再確認し、今なぜ、ハンセン病問題基本法の制定が必要なのかを考え、新しい法律の制定に司法書士として深く関わることの意義、回復者の方々の人生最期の闘いを共に闘っていくことの意義を確認し、集会アピールという形で対外的にも広く訴える機会としたいと考えております。

【5】主なプログラムの概要(多少変更する場合があります)
(1)13:10〜13:40【30分】
    憲法委員会の取材活動と報告
(2)13:40〜14:00【20分】
    ハンセン病療養所における聴き取り調査を終えて
      聴き取り調査での証言や資料の上映など
        報告者 愛楽園聴き取り調査事務局員
(3)14:00〜15:00【60分】
    ハンセン病差別被害の法的研究
      法律が下支えしてきたハンセン病の終身強制隔離政策
      法律の信頼回復のために
        講師 琉球大学教授森川恭剛先生
(4)15:20〜16:50【90分】
    パネル・ディスカッション
      憲法問題・ハンセン病問題と全青司の取組みについて
        パネラー
          早稲田大学教授水島朝穂先生
          全国退所者原告団連絡協議会の方
          琉球大学森川恭剛教授
          証言集事務局員
        コーディネーター
          全青司憲法委員会西山弓子
          同澤田章仁
(5)17:00〜17:50【50分】
    基調総括 早稲田大学教授水島朝穂先生
(6)17:50〜18:00【10分】
    集会アピール
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(9)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/07/05 22:06
今回のテーマ:見えない憲法第3条/教育目標としての平準化(同著57頁)

【解読レジュメ】

「見えない憲法」の第4条には、

国家は国民を保護せよ

と書いてあるはずである。

「国家の保護義務」論は、「見える憲法」のほうでも議論されている。
    ↓
国民は「自由権」の保護の救済を国家に求めることができ、国家は救済しなければならない義務を負うとする議論である。
    ↓
この議論はこの国の「見えない憲法」のほうではむしろ当たり前であった。
この国では「自由で自己決定的な個人」が根付かず、
国家が国民を保護するのは空気がタダであるのと同様に当然だと考えられてきたのである。
    ↓
このことは霞ヶ関の官僚支配を裏打ちする一因でもあった。
    ↓
しかし、このノリは、規制緩和の波にさらされている。
個人は今、規制緩和によって国家というシェルターから放り出され、冷たい風に直接あたるという状況に置かれている。


【澤田コメント】

 国家の保護義務論とは、社会権・受益権とは異なり、「自由権」を保護する義務を国家に負わせるものである。
 この議論は、「個人はみな、か弱き子羊である」ということを前提としているように思える。あるいは個人は子羊のフリをしているのか?

 ともあれ、「見えない憲法」の4か条は、すべて出揃った。以下のとおりである。

第1条 日本の経済秩序は、社会公平や正義の実現といった特定の価値観をかぶせられた経済秩序(=社会経済秩序)である。

第2条 完全雇用を守れ。

第3条 個人の能力や人格は平準化・規格化されているほうが望ましい。

第4条 国家は国民を保護せよ。


 棟居教授は言う。
 近時、改憲論が盛んになりつつある。仮にも改憲を論じるのであれば、先ずは、その対象は「見えない憲法」におかれなければならない。
 これまでのような本音=「見えない憲法」と、タテマエ=「見える憲法」の便宜的な使い分けを解消するための改憲が必要である。
 と。

 澤田個人の受け取り方であるが、
 棟居教授は、おそらく、そのような視点に立たなければ、日本国憲法の「立憲主義」はいつまでたっても回復しない、と考えておられるように思える。

 日本人のみならず、国際化した社会では外国人にとっても、憲法は、透明で「見える憲法」でなければ、立憲主義は名目化する。

 「見えない憲法」を可視化した上で、これと「見える憲法」をどのように調整していくか?改憲論議には、そういったシナリオの検討が必要であろう。このような検討は、とりもなおさず「この国のかたち」をどう描くか、の議論である。
 焦点の9条をどうするか以前に、この議論を先ずは進める必要があるように思える。
 立憲主義の回復のために・・・

 次回以降、「見えない憲法」可視化のシナリオを紹介していくことにしよう。

 (澤田章仁)
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大人の広島修学旅行シリーズ(3日目)

2007/06/02 00:47
さて、今回の修学旅行最終日の三日目が来た。
広島市内のホテルから、呉の「大和ミュージアム」に出かけた。
心づもりとしては、大和の最後の姿を通して、戦争の悲惨さあるいは無意味さを訴える博物館にでも出かけるつもりであった。

しかし、そこで目にしたものは、旧海軍そして現在の海上自衛隊の勇姿を見せ付けるものであった。誇らしげに我が国の戦力が展示されていた。写真は復元されたゼロ戦とつい最近まで使用されていた潜水艦の実物である。

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次に出かけたのは、江田島である。
大和ミュージアムのすぐ隣の港から船で15分程度でたどり着く。船の中から目に入って来たのは、現物の自衛艦である。何隻も並んで停泊しており、実際に見るのとテレビで見るのとでは迫力が違う。

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江田島には、海上自衛隊第1術科学校(旧海軍兵学校)がある。この施設は申し込めば見学をすることができる。多少ウキウキした気持ちで学校内に入り、見学を申し出たら、案内係りの人が施設内を説明しながら案内をしてくれた。案内係りの人は、客商売でも十分通用しそうな、なかなか面白いおじさんだった。
案内されて先ず目に飛び込んでくるのは、戦前に建てられた大講堂。重厚感のある石造の建物だ。大講堂の中は、実に厳粛な雰囲気だった。天皇陛下や総理大臣が訪れる場所だそうだ。

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さらに奥に歩を進めると、静かでいにしえのたたずまいの幹部候補生学校(旧生徒館)が出迎えてくれる。これも戦前に建てられたそうだが、総工費が気になった。しかし、建物は、芸術的で本当に素晴らしい。こんな建物で数年間を過せば、もしかしたら人格の変化がでてくるのかもしれない、と感じた。

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そして、この幹部候補生学校の裏には、人間特攻魚雷「カイテン」がピカピカに磨かれて、今にも命が吹き込まれるような趣きで、平和な時代のひと時をくつろいでいるようであった。

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その後、本来であれば資料館を案内してくれるそうだが、工事で閉鎖中のため、一部の資料が展示されている仮設展示室に案内されたのだが、ここは撮影禁止だそうで、その雰囲気をお伝えすることはできない。
しかし、展示されていた旧日本軍の若者の遺書は、どれもこれもが勇士を表明するものであり、死ぬのが恐いなどと書かれたものは見事に存在しない。
もし僕だったら・・・、と想像すると・・・。

ただ、今となっては当時の若者を讃えるほかあるまい。
服従と不服従の選択の余地はなかったのであろうから・・・。


見学を終え、再び江田島から30分ほど船に揺られ、広島市内に帰ってきた。
初日に来た平和祈念公園に自然と足が向かっていた。
自分でもよく分からないのだが、何か自分の中の葛藤(?)をかき消そうとしていたに違いない・・・。

資料館で見たものは・・・。
下の写真は良くみるのだが、今日の印象は、いつもと違う・・・。
深層心理で揺れ動く自分を押さえきれず、小走りに、次から次へと展示資料を噛み付くように見ている・・・。
館内には人も多く、慌ただしさを感じながらも、ビデオで流される罹災遺族の体験談は、その時の自分には新鮮に心に響き渡っていた。

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館内はストロボの使用禁止が掲示されいたが撮影自体が禁止されているわけではないようである。しかし、放射能で無残に破壊された人間の写真については、掲載を控えよう。

核兵器は、とてつもない威力で、人々が生き生きと暮らす街を一瞬にして破壊し、そして、人間の身体を内外から破壊する。分かりきったことかもしれないが、この事実に、我々は被爆国の住民として、常に覚醒していなければならないのである。

事実を見る。証拠を見る。先ずはこのことが大事だ。
今に生きる我々が事実を知ることができる「客観的」「現実的」な貴重な証拠がここにはふんだんにある。
歴史上の特定の人物像に何かを見出したり、マスコミが好き勝手に垂れ流すニュースより、あるいは知識人などと呼ばれる「人間の顔」の見えない人々の議論を聞くより、先ずはこの事実を見て、自らが何かを考えるべきであろう。
教科書は、その後に読めばいい。


そして、今日もまた多くの外国人が、この地を訪れていた・・・。

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 澤田章仁
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大人の広島修学旅行シリーズ(2日目)

2007/05/07 22:47
 さて、1日目に引き続き、2日目も晴天だった。
 2日目も特に目的もなく広島駅から「マリン・ビュー」(呉線・三原行き)に乗って、2時間以上かけて三原市へ行った。車窓からの眺めは最高で、線路の横の国道を走るオートバイを追い越して、電車は快適に進んで行く。

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 三原駅から降り立ち、はじめに目に飛び込んできたのが、「人権尊重都市」と大きく書かれた看板だった。こんな看板がはじめに目に付いてしまう自分は一体何者か?自分でも少し首をかしげた次第である。
 うーむ。確かに三原市は、外国籍の永住市民の方々にも条例で住民投票権を認めている自治体でもあり、こんなアピールは、自治体に競ってやってもらいたいところだ。

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 そして、その看板のとおり?三原市には地元の人々が楽しめるおもしろそうな大学があるようだ!過疎化が進んでいるこの町で、きっとこの大学は、地元住民のふれいの場となっているのだろう・・・。
 地元の人たちが生き生きとした人生を送るために自治体ができることは多いのだと関心したのだが・・・。
 しかし、こんな過疎化が進む小さな街でも、そのかたわらでは、監視社会が刻一刻と進行しつつあるようだ。

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 いろいろと考えると複雑な気持ちになるが、最後に見たこんな店の看板が、どことなく僕の気持ちをほぐしてくれた。時間が昼間なので開いてない様子だったが、いつか尋ねてみたいショットバーだ。

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 再び電車に乗って、一路、尾道に向かった。線路際に立ち並ぶ家々の隙間から小高い山に登って、由緒ある寺の屋根の上から尾道の全景をしばし眺める。

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 尾道には、小高い山の斜面に古い民家がひしめき合っているが、この町並みの暮らしは楽しそうだ。
 子どもだったら自転車でこの狭い民家の隙間の坂道を走り回っていたかもしれない。

 人と人とのつながりは地元のコミュニティーが基本?
 近隣の人々が助け合って暮らしていける様な理想のコミュニティーが今の時代にどれだけ存在するのかは分からないが、ひしめき合って住居が立ち並ぶ、このうっとおしい町並みには、そんな理想のコミュニティーがあるのかもしれない・・・。

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 三原市を経由して尾道を歩いてだんだん疲れてきた。
 電車と徒歩で、旅をするなんて・・・。考えてみたら、年老いた自分の老後を前倒しで体験しているのかもしれないと、ふと思った。が、なかなかいいもんだ。
 そして、この旅の2日目をしめくくったのが、尾道市内の若者が集うあやしげなバーでの、ギネスビール(原産国はイギリス)だ。

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 うーむ。やっぱり修学旅行は、大人になってするものだなぁ〜。

  澤田章仁
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大人の広島修学旅行シリーズ(1日目)

2007/05/01 22:35
 2007年4月28日から30日まで、広島に自分勝手な修学旅行に出かけた。
 中学時代の修学旅行も広島だったが、その頃の記憶はあまりない。ただ、クラスメイトとグループを作って夜の宿で枕戦争をした記憶がかすかに残っているくらいだ。
 今回の自分勝手な旅行の行き先に広島を選んだ理由も特に何かの思い入れがあったわけではないが、原爆投下の地を大人になって再度見ておくべきだろうというささやかな勉強心を抱いていたことは事実だ。どうしてそんな気持ちになったのかは、今でも分からない。
 そんなささやかな自分勝手な修学旅行だが、二泊三日の行程を今回から3回に分けてご紹介しよう。

 先ずは、広島球場で行なわれた阪神VS広島を観戦した。もちろん、選んだ席は阪神側のスタンドだ。好天に恵まれ最高のDAY‐GAME日和だった。
 7回表には無数の風船が大空を舞って試合を盛り上げたが、愛するトラは、残念ながら敗北した。

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 しかし、広島球場付近は、爆心地に近い場所だが、今の日本はホント幸せだなぁ〜と実感したのであった。

 試合を見て熱っぽくなった後は、すぐ近くの原爆ドーム付近に出かけた。

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 日本が最悪の経験をしたことを今でも証明し続けるこの建物の近くには、幼い女の子をモチーフにした悲しげな碑がある。そのすぐ近くには、この碑の女の子を再現するかのように、楽しく遊んでいる外国人の幼い女の子がいた。

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 そして付近を見渡せば、多くの外国人の方々がこの地を見てそれぞれの想いにしたがって何かを感じているようだった。

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 なぜ、多くの外国人の方々がこの地を訪れるのか?

 そして、日本の幼い女の子の二人の碑と、そのすぐ近くで遊ぶ外国人の幼い二人の女の子は、時代と国境を超えて、命の重さはみんな同じなのだと語り掛けているような気がした。

 1日目のリポートはここまで。

  澤田章仁
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(8)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/04/05 23:11
今回のテーマ:見えない憲法第3条/教育目標としての平準化(同著57頁)

【解読レジュメ】

(1)見えない憲法第3条の価値
 教育の上では、個性・突出した強者をよしとせず、平均値が最良と考えられてきた点に疑いはない。
 右肩上がりの日本経済を支える企業戦士は、ユニット化され、過労死してもパーツとして交換できることが効率を支えてきた。
      ↓
 他方、行政の観点からも、規制や福祉の実現の上で、社会の構成員が平準化され、似たり寄ったりのときは、個人の幸福の最大公約数的な幸福の最大化に合致する。
      ↓
 したがって、見えない憲法第3条には、個人の能力や人格は平準化・規格化されている方が好ましいと記されているはずである。

(2)見えない憲法第3条の価値の実現手段
 詰め込み型の受験教育である。考えるのを止め丸暗記に走る。その知識を吐き出せば評価される。その結果、天才や異能を排除してきた。・・・授業も三流
      ↓
(伝聞だが)イギリスの高校では何ヶ月もかけて、第1次世界大戦がなぜ起きたかを報告と討議を繰り返すことがあった。・・・一流の公民の授業だ!
      ↓
 しかし、日本社会ではこのような一流の公民の授業は、むしろ有害であったことは論を待たない。

【澤田コメント】

 棟居教授の論文なのかエッセイなのかは不明だが、「ポストモダンの憲法学」(憲法学再論3頁)という論考には、次のような記述がある。

************************

  二 お前はなにをしてきたか

 いいかげんな分類で恐縮だが、戦後日本の憲法学者は、次の三種類の学者がいるといってよいように思う(もちろん混合型が通例であろう。なお、どうでもよいことだが、筆者(棟居快行教授自身)は遺憾なことだがAとしてはスマートさに欠け、Bほどの勉強家ではなく、Cのような情熱は持ち合わせていない)。
 A 西欧近代の理念を日本に接木しようとするスマートな開明派リベラリスト
 B 日本の憲法裁判を意識しながら主にアメリカの司法審査の法技術を導入しようとする学究肌の純法律家タイプ
 C 体を張って運動論もしくは運動論的解釈論を展開してきた土着型の護憲派

************************

 棟居教授の他の著書・論考・判例解説等を読めばわかるが、不勉強の私でも、棟居教授の特異の言い回しが頭に響き、そして残る。
 曽我部助教授も「自由かつ博識」と評価し、その「自由な発想」に一目置いておられる。

 私のような「法律実務家」も、もしかしたら自由業と言われる類に属しているせいで、自分には自由な発想があると思い込んでいる者も多いのではないかと思う。
 しかし、本当に自由な発想が持てるのであろうか?
 現在の登記実務はもちろんのこと、裁判実務とて、そのようなことが通用する社会ではない。
 個性や異能がかき消されているのは、教育や企業社会の場面だけではない。

 その結果「事件は類型化」され「法律実務家も規格化」され、決して真の実態に迫ろうとはしない実務姿勢が横行しているように思える。

 そして、そのような司法制度を最良と考え、司法制度改革審議会の最終意見書においても「個人の手続的自律」は、蚊帳の外におかれ、パターナリスティックな「法曹三者」の役割に最大の期待が寄せられているようである。
 右肩上がりの「司法アクセス」を目差し、最大公約数的なわずかな「紛争処理類型」が最良の制度として構築されつつある。

 見えない憲法第3条は、マスプロ教育のなせる業を日本社会のあらゆる場面において推進中である。

 澤田章仁
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【14】「石に泳ぐ魚」事件(最判平成14年9月24日判決)−曽我部真裕助教授の論点整理−

2007/04/03 02:09
<事案の概要>
上告人Y1が執筆した小説(「石に泳ぐ魚」)のモデルとされた女性(被上告人X)は、顔面に大きな腫瘍があり、また父親には逮捕歴があった。被上告人Xは、この小説の発行等によって、Xを知る周囲の者にこの事実が知られることとなったため、名誉を毀損され、プライバシー及び名誉感情を侵害されたとして、上告人Y1らに対して慰謝料の支払を求めるとともに、上告人Y1及び同小説の韓国版の出版についての権限を有する上告人Y2に対し、同小説の出版等の差止めなどを求めた。

<論点>
□小説論(小説はあくまで小説とする考え方)と名誉やプライバシー侵害に関する法律論との関係→本件では判断なし
□モデルとされた人物が高名な人物ではなく市井の一般人である場合でもプライバシー権侵害の問題は生じるか?→モデルの特徴・言動と結びつく限り、少数の知人等が知ることができる→(2)参照。ただし、この点についての判断は不明確
□芸術性の昇華は権利侵害を減殺し得るか?→本件では判断なし(→このような判断自体「法律上の争訟」から外れるのではとの指摘あり・棟居快行)
□身体的特徴(外界からの認識可能な事実)はプライバシーに該当するか?→本件では判断不明確(→「むやみに社会的評価にさらされることのない自由」という意味でのプライバシーに該当するとの指摘あり・棟居快行)
□出版差止の要件→利益衡量論か?→(1)参照


<澤田コメント>
本件はリニューアルした「憲法判例百選(第5版)」の69事件である。この解説の執筆担当は京都大学曽我部真裕助教授である。同助教授は、この解説の中で、従来からあまり論点とされてこなかった以上の論点を、斬新かつ詳細に整理しておられる。是非、一読されたい。

憲法判例百選 1
高橋 和之編 / 長谷部 恭男編 / 石川 健治編
有斐閣 (2007.2)
通常24時間以内に発送します。


なお、曽我部助教授は、近日発行のジュリスト臨時増刊『平成18年度重要判例解説』でも執筆を担当されている。斬新かつ明快な曽我部助教授のアングルは期待を裏切らないはずである。

<判旨>
(1)人格的価値を侵害された者は,人格権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生ずべき侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である。どのような場合に侵害行為の差止めが認められるかは,侵害行為の対象となった人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意しつつ,予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることによって受ける侵害者側の不利益とを比較衡量して決すべきである。そして,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきである。
(2)被上告人は,大学院生にすぎず公的立場にある者ではなく,また,本件小説において問題とされている表現内容は,公共の利害に関する事項でもない。さらに,本件小説の出版等がされれば,被上告人の精神的苦痛が倍加され,被上告人が平穏な日常生活や社会生活を送ることが困難となるおそれがある。そして,本件小説を読む者が新たに加わるごとに,被上告人の精神的苦痛が増加し,被上告人の平穏な日常生活が害される可能性も増大するもので,出版等による公表を差し止める必要性は極めて大きい。
(3)原審の確定した事実関係の下において,原審の上記各判断がいずれも憲法21条1項に違反するものでないことは,当裁判所の判例(最高裁昭和41年(あ)第2472号同44年6月25日大法廷判決・刑集23巻7号975頁,最高裁昭和56年(オ)第609号同61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁)の趣旨に照らして明らかである。

 澤田章仁
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(7)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/04/01 20:07
今回のテーマ:見えない憲法第2条/完全雇用の要請(同著56頁)

【解読レジュメ】

(1)「見えない憲法」第2条の価値
 「見えない憲法」の第2条には完全雇用を守れと記されていよう。これは、「見えない憲法」第1条の社会経済秩序の結びついている。
      ↓
 このようなケインズ的・ニューディール的大義名分は、霞ヶ関的な官僚支配を許してきた。
      ↓
 官僚支配は、富国強兵ならず富国富民(富国神社?)という価値の実現を目差した。

(2)「見える憲法」との折衝
 本来的には、上記の「見えない憲法」第2条は、現行の「見える憲法」の営業の自由(22条)、財産権保障(29条)とぶつかる。
      ↓
 しかしながら、学説・判例ともに、「積極規制」の名の下に、官僚の経済介入を合憲的介入として、「見えない憲法」第2条にお墨付きを与えてきた。
      ↓
 学説・判例ともに、消費者や国民一般の安全を確保するために「消極規制」(社会的規制)とは別個の、経済政策的な規制=「積極規制」を許容してきたのである。 
      ↓
 たとえば、「先進的経営を行なう大手大型スーパーが一人勝ちするところを、大店法のおかげで零細商店街もやっていくことができた。失業者も出さずにすんだ。」という論法が、官僚統制経済を正当化してきた。
      ↓
 「分配」と「再分配」とを区別せず、一人勝ちが出ないようにして、官僚が、自由競争に最初からハンディをつけてきた。
      ↓
 この大義名分は「完全雇用の実現」に尽きる。
 その結果、保護されてきた競争力のない側の人も、自分自身の能力に鑑み、最適な配分ではない、つまりベストの職種でないかもしれない職種に、安住してきた可能性がある。

【澤田コメント】

 今回の解読によれば、棟居教授は、全体的には、経済的自由権に関する従来からの規制二分論(積極規制と消極規制)について、その限界を指摘しているように思える。
      ↓
 棟居教授が指摘する従来の積極規制の名の下に合憲とされてきた官僚の経済介入は、ある意味では、人を失業させておいて事後的に生活保護だというよりも、仕事で食っていけるというプラスの面もあろう。
      ↓
 しかし、このような積極規制に対して難色を示す棟居教授の真意はどこにあるのだろうか?おそらく、以下の2点に重要な価値を見出されるのであろう。

<第1点>
 見える憲法第25条の生存権保障(再配分)と、見える憲法第22条・29条の経済的自由権(配分)は明確に区別し、生存権保障は、本来、事後的な制度として構築されるべきであ。

 * この点、棟居教授は、第25条の生存権については、独自の具体的権利説(法律の不備があっても生存を保障するための具体的給付は可能である)に立つ。

<第2点>
 経済行為の基本原則である「自由競争」に対し、官僚の積極規制がかけられるおかげで、日本経済は、真の競争力を失っている。そして、零細企業等の潜在能力すら、それを発揮する機会を奪うことになっている。


 本稿では、(私の読解力が不足しているせいかもしれないが)、必ずしも「分配」と「再分配」の概念が明確に読み取ることができないため、以上の分析は棟居教授の意図するところと異なるかもしれないが、このような分析<第1点><第2点>は、現在の政府がとる経済政策の方向性と合流しているのかもしれない・・・。

 澤田章仁
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(6)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/03/30 22:52
今回のテーマ:見えない憲法第1条/競争制限的社会秩序(同著55頁)

【解読レジュメ】

 日本社会は戦後も一貫して、自由競争の経済モデルを採ってこなかった。すなわち、

日本の経済秩序は、

社会公平や正義の実現といった特定の価値観をかぶせられた

経済秩序=社会経済秩序


であるということが、「見えない憲法」の第1条


 に書いてある。
      ↓
 分配と再分配の未分離モデル
 すなわち、自由競争を放任し、後に累進課税や生活保護などの方法で所得を再分配するのではなく、自由競争のプロセスそのものを既得権保護のために歪めるというのが、わが国の経済政策の特徴である。
      ↓
 ちなみに、自由の国アメリカでも福祉がないわけではない。
 ただし、その手法は、自由競争によって億万長者を輩出させ、彼ら彼女らから支払われる税金を貧者に再分配するという手法をとる。
      ↓
 つまり、分配と再分配は、プロセスとして明確に区別されている。


【澤田コメント】

 日本国憲法は、営業の自由(22条)や財産権保障(29条)を定め、かつ判例・通説は29条は資本主義経済を制度的に保障したものと解している。
 したがって、日本国憲法の下での経済システムは、「自由市場という経済モデル」を想定したものと思われる。
 しかし、棟居教授は、現実は異なると指摘するのである。

 棟居教授は、自由市場という経済モデルについて、
  @ 国家は小さな政府に徹し、
  A 自由競争のルールを見だす悪徳商法を排除し、
  B 独占や不公正な取引を規制し、
  C その他の技術的な取引のルールを規定し、
  D 参加者に以上を遵守させ、
 国家は、これ以上のことをする必要がない、と整理する。

 要するに、経済政策の場面では、夜警国家に徹すべきことが、日本国憲法の基本的スタンスであるということであろう。

 「見えない憲法」第1条は、そういった日本国憲法の価値を否定し、いわば「社会政策」的見地から、公権力によって自由競争を制限することを保障するものである。
 また、この第1条が役人の強い味方となって、官主導の強力な経済規制が許容されているのが、現実の日本社会である、という結論でしめてよさそうである。

 澤田章仁

**************************************

憲法学再論
憲法学再論
posted with 簡単リンクくん at 2007. 3.30
棟居 快行著
信山社出版 (2001.3)
通常1-3週間以内に発送します。


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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(5)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/03/29 23:53
今回のテーマ:仮説としての「見えない憲法」(同著52頁)

【解読レジュメ】

(1)「見えない憲法」とは

@私見(棟居教授)によれば、この国では、国家機関を含む社会全体が、日本国憲法とは別の、不文の基本法ないし「最高法規」によって規律されている。それは日本社会にどっぷり浸かってきた者なら誰でも知っている普遍的な規範である。これを「見えない憲法」と呼ぶ。

A「見えない憲法」は、日本国憲法と区別して使い分けられ、人々の意識に浸透し、国家や社会を動かしてきた。

   紙に書かれた日本国憲法=「見える憲法」

   紙に書かれざる不文の最高法規=「見えない憲法」

Bしかし、この「見える憲法」という建前と、「見えない憲法」という本音の使い分けの行き詰まりがきた。

 ***「見えない憲法」の例***

 ア 国は自然災害からも国民の生命財産を守る責務を負っているという。
   →確かにこの大義名分でもって河川工事を行なってきたが、
   →大震災の被害の個人補償は及び腰であった。

 イ 企業は従業員の終身雇用を保障するという。
   →その代償として、従業員は企業に対し雇用契約では説明のつかない忠誠を尽す。

 ウ 差別はよくないという。
   →しかし、学歴差別は努力や才能の結果であるから当然として正当化する。
   →また、子どもの健全な成長や老人介護のためには専業主婦がよいとして、税制や年金等で優遇する。

(2)「見えない憲法」の基本的命題
 以上の雑多な「見えない憲法」の基本的な命題は次の4点である。

@弱肉強食の自由競争経済ではなく、国家による競争制限的な社会経済秩序が望ましい。

A国民の雇用を確保することは国家及び企業の責務である。

B教育は、平準化・規格化された個人の再生産を目的とすべきである。

C国家は、国民の安全と財産を保護すべきであり、国民自身に成り代わってでもその責務を実現する義務と権限を有している。

 以上のような基本的価値が、立法・行政・司法で貫かれてきた「基本原理」である。
      ↓
 しかし、こうしたローカル・ルールは、今日のグローバル・スタンダードの容赦のない波及の下で、立ち行かなくなった。
 中身が「見えない」のだから、内容の良し悪し以前に失格である。
      ↓
 そこで、「見えない憲法」を整理し、この国を覆い尽してきたものを明らかにすべき。
      ↓
 その上で、これを国際標準に合わせて変更するのか、それとも部分的にでも残すのか。
      ↓
 以上のような検討で得られた結論は、日本国憲法の改正という形で、「見える憲法」とすべきであろう。

【澤田レジュメ】

 これまでを振り返ってみよう。

 まず、この国の立法・行政・司法は日本国憲法を遵守してこなかった。
      ↓
 立憲主義・法の支配は低下し、別の価値がこの国を覆い尽してきた。
      ↓
 とくに少数派の「個人」の価値は軽んじられ、少数派に鈍感な人々の価値が優先されてきた。
      ↓
 すなわち、この国には、紙に書かれた見える日本国憲法とは別の、書かれざる不文の「見えない憲法」が存在する(仮説)。

 ということである。そこで、棟居教授は、国家や日本社会に対し、頑固に日本国憲法を押し付けることはせず、日本国憲法を改正すべき点があるならば改正しよう、という発想に立つのである。

 ところで、棟居教授は、「見えない憲法」には、4か条が存在するという。次回以降、この4か条を逐条解説することにしよう。

 澤田章仁

************************************

憲法学再論
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棟居 快行著
信山社出版 (2001.3)
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(4)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/03/22 22:54
今回のテーマ:日本国憲法は実効性を持たれてきたか?(その3)(同著51頁)

【解読レジュメ】

(0)前提
 法律の世界では、憲法がチャンピオン
 しかし、日本社会がそうなっているかどうかは別問題
 9条を待つまでもなく、実際の日本社会は、
 日本国憲法が基本法でありかつ最高法規であったとは言いがたい・・・

(1)国会は憲法を遵守してきたか(前々回の記事)→NO

(2)行政府は憲法を遵守してきたか(前回の記事)→NO

(3)裁判所は憲法を遵守してきたか

◎裁判所さえも、日本国憲法とは別個の価値にとらわれてきた感がある。
 たとえば、

 憲法20条が国家権力と宗教との癒着を禁じ、政教分離を定めているにもかかわらず、津市が主催して宗教行事を行なったにもかかわらず、
 @目的が宗教的な意義を持ってなかった、
 A特定の宗教を助長するような大きな効果はなかった、

 として、いわゆる「目的効果基準」を採用し、合憲判決を出している(津地鎮祭訴訟最判昭和52年7月31日判決)。
      ↓
 ただし、解釈には常に対立があるのであり、このような憲法解釈が間違いだというのではない。問題は、最高裁の述べた次の理論である。
      ↓
 平均的日本人は「宗教意識の雑居性」の中にあり、特定宗教に鈍感な多数人の目で、政教分離原則違反かどうかの判断を行なうべし、と。
      ↓
 憲法が保障する人権規定は、国会の多数決をもってしても侵害し得ないものである。だからこそ憲法に規定するのであり、そうでなければたんに国会の多数決にまかせておけばよういのである。
 すなわち、人権保障は、少数者の人権こそを、その対象とする面がある。
      ↓
 しかし、前記最高裁は、宗教的に敏感な少数者の目で問題を見ていない。むしろ自覚的に多数者の目で見ている。「そんなに騒ぐほどのことではない・・・」と。
 こうした判断はある意味「常識的」なのかもしれない。だがしかし、憲法が掲げる普遍的な価値は、もっと人間の本性、とくに多数者の本性に懐疑的なのである。


◎多数派が自分達の価値をごり押しする、しかもそれを少数派にとってもいいことなのだと信じて・・・。
      ↓
 こういう価値観の多様性に対する無知と不寛容は、憲法の人権保障が最も警戒する事柄なのである。
      ↓
 以上のとおり、わが国の最高裁は、日本国憲法の人権保障の根底にある個人主義的価値観とは別個の「日本社会の常識」とでもいうべき価値を追及してきたといえる。

(4)まとめ
 以上のとおり、国会・行政機関のみならず司法権までが、日本国憲法から乖離している。
      ↓
 こうした事態は、この国の国家機関が「違憲をものともしないけしからん体質」を持っているのだと切って捨てるだけでは説明できないように思われる。
      ↓
 この乖離現象の原因究明が必要となる。

【澤田コメント】

 まことに残念というか、立場によっては当たり前というか、結局、棟居教授の分析によれば、三権のすべてが、日本国憲法とは異なる別個の価値を追い求めているということになる。

 それにしても、私自身が棟居教授に傾倒する理由は、今回のレジュメにも表れているが、多数決を最終手段とする民主主義よりも、個人主義を徹底して重視する点である(下記URL参照)。

   http://sawasawa-kum.at.webry.info/200612/article_1.html

 棟居教授は、国家権力と日本国憲法の乖離現象の原因究明のため、「見えない憲法」という仮説を立てる。このブログのタイトルの選定にも影響を及ぼしている仮説である。
 次回以降、この仮説「見えない憲法」をご紹介していくことにしよう。

 澤田章仁
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(3)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/03/22 00:32
今回のテーマ:日本国憲法は実効性を持たれてきたか?(その2)(同著50頁)

【解読レジュメ】

(0)前提
 法律の世界では、憲法がチャンピオン
 しかし、日本社会がそうなっているかどうかは別問題
 9条を待つまでもなく、実際の日本社会は、
 日本国憲法が基本法でありかつ最高法規であったとは言いがたい・・・

(1)国会は憲法を遵守してきたか(前回の記事)

(2)行政府は憲法を遵守してきたか

 行政府は、法治主義(憲法の大原則)を「行政指導」の名の下に迂回してきた。
 「行政指導」の中身といえば、国会について述べた(1)のAの業界の既得権保護の性格が強く、日本国憲法では説明のつかない価値を追及してきた。
     ↓
 憲法的観点から見れば、個人も、法人も、自己責任に基づく自由な「自己決定」が認められている。
     ↓
 個人の場合、それは個人の尊厳にかかわる最重要事項である(憲法13条)。
     ↓
 ところが、官主導の経済運営では、個人や企業の自由な創意工夫ではなく、官製の事業計画が割り当てられる。たとえば、ベンチャービジネスの参入の排除など・・・。

【澤田コメント】

 まず、法治主義(憲法の大原則)というのは、立憲主義的観点から導かれる帰結といえるであろう。
 私見では、人類が立憲主義憲法の時代に入った以降、国会・行政府・裁判所などの国家の機構は、宗教・道徳観・個人の価値観などによる運営を捨てて来たのだ、ということが「法治主義」の原点であると考えているわけだが・・・。

 棟居教授は、このような前振りをした上で、「個人の尊厳」を持ち出している。この流れは、ドゥオーキン(Gerald Dworkin)の「権利論」(Taking Rights Seriously, 1977)、すなわち「権利について真剣に考える」を想起させられる。

 なお、ベンチャービジネスについては、会社法施行に伴い既に廃止されたが資本金1円での会社設立を認める「確認会社」の導入や、平成18年5月1日から施行された会社法などによって様々な種類株式の発行や会社の機関構造の自由な選択が認められ、また資本金規制の緩和などがなされ、実現しやすくなってきている。しかし、これは十数年遅れでアメリカの手法を取り入れたにすぎず、遅きに失した感があろう。
 また、この会社法は、敵対的買収に対する防衛手段や、ベンチャー企業を設立し易くする会社の仕組みをお膳立てしたにすぎず、各種の業法(銀行法など)によって、新規参入規制が厳重になされている点には従来からさほどの違いはない。

 ところで、「行政指導」の類に属すると思われるが、近時の貸金業規制法改正前の貸金業規制法に関する金融庁の事務ガイドラインは、まさに業界益を色濃く印象付けるものが多数含まれていた。国会による立法では貸金業規制法において利息制限法を大幅に超過する利息の受領を認めてみたり、行政機関による行政指導では極めて悪質な違法年金担保などを放置してきた事実もある。
 すなわち、国会と行政機関が、一体となって、資金需要者たる消費者保護より、業界益の保護に傾いていた事実としては、わりと明らかな例であろう。
 なお、違法年金担保に関しては、下記記事を参照のこと。

   http://sawasawa-kum.at.webry.info/200703/article_4.html

   http://sawasawa-kum.at.webry.info/200703/article_5.html

 次回は、裁判所が憲法を遵守してきたか否かを検討するが、どうもこの国の三権は三位一体となって憲法とは異なる価値の実現を求めているのかもしれないといった予感がする。

 法の支配原理の下では、裁判所だけは、そうあって欲しくないが、いかがであろうか・・・。次回、その真実が明らかになる。

 澤田章仁
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(2)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/03/20 14:45
今回のテーマ:日本国憲法は実効性を持たれてきたか?(その1)(同著49頁)

【解読レジュメ】

(0)前提
 法律の世界では、憲法がチャンピオン
 しかし、日本社会がそうなっているかどうかは別問題
 9条を待つまでもなく、実際の日本社会は、
 日本国憲法が基本法でありかつ最高法規であったとは言いがたい・・・

(1)国会は憲法を遵守してきたか

 国会は、憲法上の価値とは別個の価値の実現を、せっせと法律で行なってきた。
 たとえば、

@1995年の刑法改正前に存在した旧刑法200条の尊属殺人罪について
     ↓
 1983年(昭和48年)の最高裁判決で憲法14条1項違反で違憲判決が出された
     ↓
 普通殺人罪(刑法199条)は3年以上(現在は5年以上)の有期懲役があり執行猶予が可能であったが、旧刑法200条は死刑又は無期懲役のみだったため執行猶予ができなかった・・・。この差が非常に大きかったのであるが・・・。
     ↓
 このように、国会は、最高裁が違憲だと断じても、長期間にわたり、旧刑法200条を存続させてきたのである。
     ↓
 もっとも、最高裁は、普通殺人罪と尊属殺人罪を比較して後者が重すぎるとしたのではない。親を敬うべきという旧刑法200条の目的を認めながらも、それにしても重過ぎるといった同条のいわば手段を違憲としたのである。
     ↓
 それでも、国会は「親を敬う規定は変えられない」と意地を貫いたのだ。
     ↓
 すなわち、国会(とくに与党議員の頭)には、憲法よりももっと大事な道徳観・価値観が存在してきたのである。


A憲法25条の生存権保障が弱者保護の課題を国会に課している。
     ↓
 しかし、国会が作った、大規模小売店舗法(平成10年廃止)などの競争規制立法は、むしろ業界秩序の維持や既得権保護の色彩が強かった。
     ↓
 大店法の大義名分は(小規模小売店などの)弱者保護だったが、真の目的はこれに反するものであったことは明らか。
     ↓
 国会では、(小規模小売店などを含めた真の)自由競争や消費者保護より、既得権保護や業界秩序の保護が大事だ、という価値観が支配的だった。

【澤田コメント】

 今回からは、これまでの日本社会における「日本国憲法の実効性」がどれほど確保されてきたかを検証するテーマとなる。すなわち「立憲主義」がどれほど日本社会に定着していたのかの検証だと考えてよかろう。

 今回は、三権のうち、国会についての検証である。@尊属殺人罪とA大規模小売店舗法を例として挙げ、憲法理念よりも優越する国会の価値観を指摘している。このほかにも、このような例は枚挙にいとまがない。

 とくにAについては、国会は、弱者保護のためには、以下のような構図を描いていたに違いない。

  既得権保護や業界秩序の保護を図る
      ↓
  これにより大規模倒産を防ぐ
      ↓
  これにより失業者が出るのを防止できる
      ↓
  結果的に弱者保護につながる


 まあ、失業させておいて、あとで生活保護だとかいうより、あらかじめ失業を防止した方が国家財政としても良いであろうということなのだろうか・・・。

 しかし、その結果、自由競争は、小規模事業者のみならず大規模事業者にとっても官僚のペン1本で規制(操作)されてきた感がある。その意味では「官僚支配」があらゆる分野で徹底されてきたことも事実である。

 そう考えると、国会には、価値観とか道徳観以外にも、憲法より優越する様々な戒律?があるのかもしれない。

 いずれにしても、次回は行政府、そしてその次は裁判所が、それぞれ憲法を遵守してきたかを検証する。お楽しみに。

 澤田章仁
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日本的秩序と「見えない憲法」の可視化(1)−棟居快行著「憲法学再論」〔信山社〕解読−

2007/03/20 00:58
今回のテーマ:基本法であり「最高法規」としての憲法(同著48頁)

【解読レジュメ】

(1)基本法としての憲法
 国の法的なグランドデザインというほどの意味で用いる。成り立ちとしては下記の三つのカテゴリに分類できる。
 国会のその都度の多数派の手にゆだねられるべきではない普遍的な事項を定めたものと解すべき観点である。
 @主権の所在・統治機構(地方自治含む。)の基本構造部分
 A立法が実現目標とすべき価値を規定する部分(生存権など。)
 B立法その他の国家機関が侵害してはならない部分(自由権など。)

(2)最高法規としての憲法
 日本国憲法自身が98条1項によって自称しているが、そもそもこのような規定がなくても憲法は頂点に立つ。
 立法・行政・司法の分立する三権のあり方や権能は、憲法に定められ存在し、最終的には憲法にさかのぼって正当化される仕組みとなっている。すなわち、
 @国会は、憲法がその存在を認め、その構成のされ方を定め、そこに立法権を付与したからこそ国会としての法律制定等の重要な国家作用を営むことができる。
 A行政機関は、国会が法律でその構成や権限を定め、またその権限を具体的に行使するための要件を定めているからこそ、国民に対して権力的な処分を下したり、予算を執行できる。
 このように、国の法体系は「憲法→法律→行政処分」といったタテの序列をなし、国家機関のすることはみな、最終的には憲法によって正当化される。
 そして、
 B裁判所は、扱った事件で問題となる法律その他の国家行為が、憲法に適合しているか否かの審査する司法審査権を憲法によって与えられている。この重要な権限によって、憲法の最高法規という地位が、実効的に確保される。

【澤田コメント】

 棟居教授は、憲法を、(1)の基本法としての意味より、(2)の最高法規としての意味を重視しているようである。その意味では、「立憲主義」的発想を重視しているのかもしれない。

 また、(2)の中では、「憲法→法律→行政処分」といった「タテの序列」を設定する。換言すれば「@国会→A行政機関」といった序列を想起させている。

 その上で、「(憲法→)法律→行政処分」について、裁判所が憲法適合性を審査する重要な権限を憲法によって付与されているというのであるから、結局、三権の在り様ないし国家機関の「タテの序列」を以下のようにイメージするのであろうか。

  「B裁判所→@国会→A行政機関」

 この「タテの序列」の在り様はともかく、棟居教授はこのような表現でもって日本国憲法は、いわゆる「法の支配原理」を採用しているということをあらわしているのかもしれない。

 とにかく、棟居教授の「憲法学再論」はおもしろい。疑問を抱きながら本稿を読み進めていくことにしよう。

 澤田章仁

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憲法学再論
憲法学再論
posted with 簡単リンクくん at 2007. 3.30
棟居 快行著
信山社出版 (2001.3)
通常1-3週間以内に発送します。


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【13】マクリーン事件上告審判決(最大判昭和53年10月4日)批判

2007/03/09 02:08
<事案の概要>
アメリカ人マクリーン(上告人)は、1969年5月10日、1年の在留許可を得て入国したが、翌年5月1日、1年間の在留期間更新を申請した際、不許可の処分を受けた。その理由は、以下の2点である。
ア 在留期間中の無届転職:上告人は英語教師として入国を認められたが、当初届出ていた英語学校教師を十数日で辞めて、別の英語学校に転職した。
イ 在留期間中の政治活動:上告人は「外国人べ平連」」(「ベトナムに平和を!市民連合」の略称)に所属し、その集会に9回参加したほか、その他の集会やアメリカ大使館への抗議、あるいはデモ行進にも14回参加した。ただし、この政治活動は平和的行動であって、上告人の地位も特段、指導的・積極的なものではなかったことが明らかにされている。

<判例の構造>
論点はアであり、この点に関する判例の構造は、以下のように整理できよう。

政治活動(憲法21条で保障される表現の自由)
⇒外国人にも性質上保障が及ぶ。

  ↓
在留期間の更新拒絶(法務大臣の裁量)
⇒政治活動の自由が外国人に保障されるとしても、
 法務大臣は、その裁量として、
 当該政治活動を在留期間の更新の許否に関して斟酌して差し支えない。

  ↓
在留期間の更新拒絶の裁量的判断の正当性
⇒当該政治活動が「日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえない」
⇒上告人は「将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者」と認められる

 このような法務大臣の判断が明白に合理性を欠くとはいえない

<批判的考察>
(1)外国人に政治活動の自由(表現の自由)が保障されると言っておきながら、法務大臣の裁量で国外退去を強いることを許容している点で、結局、「残念でした」とばかりに、法務大臣の裁量による制限を許容している。
(2)法務大臣の裁量的判断の対象は、あくまで「在留期間の更新の許否」についてであるとしても、結果的には、外国人の政治活動の自由(表現の自由)を制限していることにかわりはない。
(3)法務大臣の判断は、「影響を及ぼすおそれ」「利益を害する行為を行うおそれがある」といった、極めて抽象的な基準である。結果的には、このような基準でもって、政治活動の自由(表現の自由)を制限することを肯定している点で、外国人の表現の自由が容易く制限することができてしまう。

<判旨抜粋>
(1)在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からであると解される。
(2)思うに、憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。
(3)しかしながら、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であって、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。
(4)上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。しかしながら、上告人の右活動のなかには、わが国の出入国管理政策に対する非難行動、あるいはアメリカ合衆国の極東政策ひいては日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に対する抗議行動のようにわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含まれており、被上告人が、当時の内外の情勢にかんがみ、上告人の右活動を日本国にとって好ましいものではないと評価し、また、上告人の右活動から同人を将来日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者と認めて、在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、その事実の評価が明白に合理性を欠き、その判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえず、他に被上告人の判断につき裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったことをうかがわせるに足りる事情の存在が確定されていない本件においては、被上告人の本件処分を違法であると判断することはできないものといわなければならない。
(澤田章仁)
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違法年金担保について【後編/刑事的効果】

2007/03/07 15:50
 貸金業規制法により担保にとることが禁止されている公的給付とは、「法令の規定により譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないこととされているもの」とされている(同法第20条の2)。これに該当する主な法令は次のとおりである。

恩給法/原子爆弾被爆者の医療等に関する法律/原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律/公害健康被害の補償等に関する法律/厚生年金保険法/国民健康保険法/国民年金法/国家公務員共済組合法/国家公務員災害補償法/雇用保険法/児童手当法/児童扶養手当法/生活保護法/地方公務員等共済組合法/中小企業退職金共済法/老人保健法/労働者災害補償保険法など。

 また、貸金業規制法が規定する担保供与の態様は、「受給権者である債務者等又は債務者等の親族その他の者の預金又は貯金の口座に払い込まれた場合に当該預金又は貯金の口座に係る資金から当該貸付けの契約に基づく債権の弁済を受けることを目的として、その者の預金通帳等(銀行印・キャッシュカード・暗証番号・年金証書・保険証券等を含む。)の引渡し若しくは提供を求め、又はこれらを保管」することである(同法第20条の2)。
 以上に違反した貸金業者は、「1年以下の懲役」又は「300万円以下の罰金」、あるいはそれらの「併科」に処せられる(同法第48条第5号の2)。
 なお、貸金業者の中には、別会社を利用して、その別会社に債務者や保証人の預金通帳等(銀行印・キャッシュカード・暗証番号・年金証書・保険証券等を含む。)を預けさせる業者もあるが、これは以上の禁止規定の脱法行為にほかならない。このような場合にも、共犯理論により、以上の罰則規定が適用されるべきであろう。

 さらに、貸金業者は、「公的な年金、手当等の受給者の借入意欲をそそるような表示又は説明」や「広告」をすることも禁止される(同法第16条第2項第4号)。たとえば、「中高年歓迎」、「2ヶ月に1回の返済でOK」、「シルバーローン」、「豊かな熟年生活をサポート」、「70歳まで借りれます。」などが、「借入意欲をそそるような」表示又は説明、広告にあたると解される。これに違反した貸金業者は、行政処分の対象となる。

 なお、民事的効果については下記URL参照。

    http://sawasawa-kum.at.webry.info/200703/article_4.html

 BY 澤田章仁
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違法年金担保について【前編/民事的効果】

2007/03/07 15:49
 違法年金担保貸付は、そもそも法律を遵守する気のない一部の悪質な貸金業者のみが行なってきたものではない。法律が禁止していることを十分に理解しながら、その法律の適用の網を潜り抜けようとする利巧な貸金業者も行なってきた。
 してみると、確かに、【後編】で説明する平成16年の貸金業規制法の改正後は、違法年金担保貸付のあらたな被害報告は減少しつつあるが、また新たな手口で法律の網を潜り抜けようとする貸金業者が出てくる可能性も否定できない。したがって、今後も警戒を欠かすことはできない。
 違法年金担保貸付を行う貸金業者は、長期間にわたり、年金等の受給権者である債務者や保証人にキャッシュカードや預金通帳などを預けさせ、年金支給日には社員総出で銀行に足を運び、債務者や保証人の年金等の受け取り口座から年金等を引き出して返済に充てたり、また、中には受給権者に無断で自動引き落としの依頼書を作成し貸金業者の銀行口座へ自動引き落としの手続きをして弁済に充てる方法をとっていた業者もある。さらには、受給権者に無断で受給権者名義の銀行口座を開設し、その銀行口座に年金等を振り込ませる手続をとっていた業者があることも報告されている。
 以上のような手口により貸付を受けた人々は、相当な長期間にわたって高金利を収奪され正当な年金等の受給額が減少したことにより、必要な医療を受けられなかったり、食事の回数を減らしたり、古くなり安くなった食品のみを購入して空腹をしのいだり、その結果健康が損なわれてしまったり、光熱費を支払えずに電気もガスもない極めて過酷な生活を強いられてきた。

 このような違法年金担保貸付によって生存を脅かされ続けてきた人たちには、過去の分も含めて、貸金業者に対する「不法行為」の損害賠償や慰謝料を請求することで被害の回復につなげることが必要だろう。貸金業者の違法年金担保貸付を、不法行為(民法709条・同710条)にあたるとして、損害賠償(慰謝料含む。)の請求を認めた裁判例は多い。

国民年金が担保とされた事案につき大阪地方裁判所平成17年3月3日判決(消費者法ニュース63号40頁)/原爆手当が担保とされた事案につき広島地方裁判所平成17年2月24日判決(消費者法ニュース63号149頁)/連帯保証人の障害年金が担保とされた事案につき大阪簡易裁判所平成17年1月17日判決(消費者法ニュース63号154頁)/老齢年金が担保とされた事案につき東京地方裁判所平成18年8月25日判決(消費者法ニュース70号102頁)/厚生年金等が担保とされた事案につき大阪地方裁判所平成18年10月31日判決(消費者法ニュース70号256頁)

 ところで、もともと、公的給付の受給権を定めた各種年金法や生活保護法のような法令は、憲法第25条を根拠に制定されたものであり、憲法第25条の趣旨を活かすために、それぞれの法令において「譲渡」や「担保設定」を禁止する規定がある。
 したがって、もともとこのような法令に基づく年金等の公的給付の受給権は、一部の例外を除き、貸金業者でなくても、誰であっても、担保にとるようなことはできないということを明確にしておきたい。

 なお、刑事的効果については、下記URL参照。

   http://sawasawa-kum.at.webry.info/200703/article_5.html

 BY 澤田章仁
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憲法改正国民投票法案と永住外国人の表現の自由

2007/03/06 00:06
 自民党と民主党の共同提案による「日本国憲法改正国民投票法案」では、永住外国人の方々の国民投票に関する「運動規制」(=表現の自由の規制)は定められていない。
 以前の自民党案には外国人の方々の運動規制が規定されていたが、今回の提案ではこの点についてみれば、より人権に配慮した提案になっており、一歩前進と受け止めてよいとも思われる。ただし、もともと外国人の人権保障は、マクリーン事件でも判示されているとおり、「性質上可能な限り」で保障されているにすぎない点に注意を要する(性質説)。なお、マクリーン事件については下記記事参照のこと。

   http://sawasawa-kum.at.webry.info/200703/article_6.html

 確かに、従来の通説のとおり、国民主権原理が鋭意に顕れている部分(国政選挙や憲法改正国民投票の投票権それ自体)については、外国人に保障が及ぶものではないとの結論にも合理性があるかもしれない。そして、これについて性質説による制約理論を説明すれば、その制約の正当性を説明し易いのかもしれない。
 しかし、性質説には、「性質上」というロジックの曖昧さがある。制約を受ける側にとっては、この曖昧さが怖い。

 僕が、ある永住外国人の方に、今話題の「日本国憲法改正国民投票法案」には、外国人の運動規制は規定されないようであるとお伝えした際、その方は「よかった。私も憲法改正について堂々と意見を表明してよいのですね。」と喜んでいた。
 僕は、その際、性質説の説明を詳しくしていない。もちろん、説明すべきであったと思うが、その場ではできなかったのである。

 マクリーン事件等を見る限り、判例によれば、外国人がする「日本国の国益を損なうような表現行為(たとえば米国に対する反戦運動など・・・。)」(?)は、法務大臣の広範な裁量のもとで規制されるおそれがある。
 そうすると、法務大臣の広範な裁量の名の下で、外国人がする憲法改正国民投票運動をもって、「日本国の国益を損なうような表現行為」などと評価されることが、ないとは限らない。
 そしてまた、その広範な裁量が、性質説の名において、合憲とされることが懸念されるのである。

 ところで、仮に「性質説」の名の下に、憲法改正国民投票運動等の表現行為が規制されるのであれば、それは時・場所・方法に関する規制=「内容中立的規制」ではなく、「内容規制」というべきである。
 したがって、このような規制をする場合には、「現に差し迫った危険が明白に存在する」場合に限って、規制されるべきである。
 そうであるならば、この表現行為の規制をもって、日本人と外国人とを区別する理由はない。日本人も外国人も、同様の制約を受けてしかるべきであろう。


 もっとも、憲法改正国民投票運動が真っ当に保障される限り、明白かつ現在の危険法理が適用される場面はほとんどないと思われるし、そもそも僕自身は、このような問題を検討する際には、「国籍」というファクターがどれほど正当性を持っているか極めて疑わしいと考えている。
 国籍を錦の御旗にする論理は、外国人は日本がヤバくなれば本国に戻ることができるという。しかし、そうであるならば日本人も憲法22条2項によって「国籍離脱の自由」が保障されているのである。
 問題は、「定住」のファクターである。このファクターこそが、その人をその地に縛る現実の要素であり、また、だからこそその地の規範を受けながら生きてゆかなければならないのである。
 すなわち、「国籍」と「定住」が一致しない時に、どちらのファクターを重視するかが問題なのであり、そこでは決定的に「定住」のファクターこそが重要なのである。


 いずれにせよ、憲法改正国民投票運動に対する性質説による制約が仮になされるとすれば、それは誤った制約と言わざるを得ない。このような誤った制約がまかり通るようなことがあってはならない。
 このような事態を未然に防止するため、是非、「永住外国人の方々も含む様々な立場にある人が憲法改正について議論をして下さい!」といった、政府の公式コメントが欲しいところである。

(澤田章仁)
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外国人登録証の常時携行義務について

2007/03/05 12:37
 日本に在留し、また永住資格をもって定住している外国人の方々には、市町村長から「登録証明書」が交付される(外登法5条)。確かに、外国人の方々の身分を証明する手段として、この「登録証明書」は、必要な措置であろう。
 ところで、外国人の方々には、この「登録証明書」について、次の義務が課されている。

 ア 常時携行義務(外登法13条1項)
 イ 入国審査官、入国警備官、警察官、海上保安官その他法務省令で定める公務員等から提示を求められた際の提示義務(外登法13条2項)

 そして、アの義務違反に対しては、入管法上の在留資格を持つ永住者については20万円以下の罰金(外登法18条の2第4号)、平和条約国籍離脱者等入管特例法に定める特別永住者については10万円以下の過料(外登法19条)の制裁がある。
 また、イの義務違反に対しては、1年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金(外登法18条第1項第7号)の制裁がある。

 僕は、最近、外国人の方と会い、この「登録証明書」を実際に見せてもらった。そこには、その方の明るい笑顔の写真が貼り付けられていた。

 しかし、この「登録証明書」を常時携帯することをうっかり忘れてしまったり、あるいは警察官に呼び止められ、いわれのない「登録証明書」の提示を求められてこれを拒んだりすると、上記のような重い制裁が待っている。
 運転免許証の不携帯には、3千円の反則金が課されるが、これと比較すると、「登録証明書」の不携帯に対する制裁は、極めて重い。

 その方の明るい笑顔の写真の背後には、「常時携行」を重い制裁で義務付けられた悲しい現実があるように思えてならない。

 なお、かつて、外国人登録の際、あるいはその更新の際には、永住外国人の指紋押捺が義務付けられていた。下記URL参照。

   http://sawasawa-kum.at.webry.info/200612/article_2.html

 澤田章仁
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【12】エホバの証人剣道授業拒否事件(最判平成8年3月8日)

2007/02/06 21:19
<事案の概要>
市立高等専門学校の校長が、信仰上の理由により剣道実技の履修を拒否した学生に対し、必修である体育科目の修得認定を受けられないことを理由として二年連続して原級留置処分をし、さらにそれを前提として退学処分をした。
これに対し学生は、信仰の核心部分と密接に関連する真摯な理由から履修を拒否したものであり、他の体育種目の履修は拒否しておらず、原級留置処分等を避けるためにはその信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせるという性質を有するものであり、またレポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨申し入れていたのに対し、学校側は、代替措置が不可能としてこの申入れを一切拒否した事案。

<論点>
□高専にとっての剣道実技の目的→(1)
□剣道実技と信仰の関係→(2)
□学校側の適切な処理とは?(宗教的寛容)→(3)、これを認めると授業が成立しなくなるか?→(5)
□代替措置を講じることは政教分離原則違反か?→(4)→本件では緩やかな基準が奏功
□信仰の自由と世俗の規範との関係→牧会活動事件・加持祈祷事件参照


<判旨>
(1)公教育の教育課程において、学年に応じた一定の重要な知識、能力等を学生に共通に修得させることが必要であることは、教育水準の確保等の要請から、否定することができず、保健体育科目の履修もその例外ではない。しかし、高等専門学校においては、剣道実技の履修が必須のものとまではいい難く、体育科目による教育目的の達成は、他の体育種目の履修などの代替的方法によってこれを行うことも性質上可能というべきである。
(2)本件各処分は、その内容それ自体において被上告人に信仰上の教義に反する行動を命じたものではなく、その意味では、被上告人の信教の自由を直接的に制約するものとはいえないが、しかし、被上告人がそれらによる重大な不利益を避けるためには剣道実技の履修という自己の信仰上の教義に反する行動を採ることを余儀なくさせられるという性質を有するものであったことは明白である。
(3)被上告人は、レポート提出等の代替措置を認めて欲しい旨繰り返し申し入れていたのであって、剣道実技を履修しないまま直ちに履修したと同様の評価を受けることを求めていたものではない。これに対し、神戸高専においては、被上告人ら「エホバの証人」である学生が、信仰上の理由から格技の授業を拒否する旨の申出をするや否や、剣道実技の履修拒否は認めず、代替措置は採らないことを明言し、被上告人及び保護者からの代替措置を採って欲しいとの要求も一切拒否し、剣道実技の補講を受けることのみを説得したというのである。本件各処分の前示の性質にかんがみれば、本件各処分に至るまでに何らかの代替措置を採ることの是非、その方法、態様等について十分に考慮するべきであったということができるが、本件においてそれがされていたとは到底いうことができない。
(4)代替措置を採ることは憲法20条3項に違反するとも主張するが、信仰上の真しな理由から剣道実技に参加することができない学生に対し、代替措置として、例えば、他の体育実技の履修、レポートの提出等を求めた上で、その成果に応じた評価をすることが、その目的において宗教的意義を有し、特定の宗教を援助、助長、促進する効果を有するものということはできず、他の宗教者又は無宗教者に圧迫、干渉を加える効果があるともいえないのであって、およそ代替措置を採ることが、その方法、態様のいかんを問わず、憲法二〇条三項に違反するということができないことは明らかである。
(5)また、公立学校において、学生の信仰を調査せん索し、宗教を序列化して別段の取扱いをすることは許されないものであるが、学生が信仰を理由に剣道実技の履修を拒否する場合に、学校が、その理由の当否を判断するため、単なる怠学のための口実であるか、当事者の説明する宗教上の信条と履修拒否との合理的関連性が認められるかどうかを確認する程度の調査をすることが公教育の宗教的中立性に反するとはいえないものと解される。
(澤田章仁)
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熊本市 ゴミ処理条例改正案(パブコメ)に関する意見書

2007/02/03 15:30
 熊本市は「資源物持ち去り禁止をするための条例改正案」に関するパブリックコメントを実施しました。
 これに対して、私たちは、熊本の弁護士・司法書士・多重債務相談員のほか、全国の司法書士有志で賛同し、以下のような意見書を提出しました。



                   意 見 書
                              2007年2月2日
 熊本市長 幸山政史 殿
                              賛 同 者 一 同
                              (賛同者代表連絡先)
                              司法書士  澤田章仁

第1 意見の趣旨
 私たちは、貴市が議会に提出を予定している、資源物等の持ち去りを禁止するための「熊本市廃棄物の処理及び清掃に関する条例」(以下「廃棄物処理条例」と称させて頂きます。)改正案に対し、その提出を取り止め、内容に関する再考を求めるため、本意見書を提出致します。

第2 意見の理由
 貴市は、廃棄物処理条例の改正案として、(1)市及び市が指定する者(資源物等の収集業務を市が委託した業者等)以外の者が、ごみステーションに出された新聞紙・段ボール・空き缶・自転車などの廃棄物を持ち去ることを禁止し、(2)その禁止の実効性を確保するために貴市がパトロールを行い、かつ、市民には、持ち去り行為者について、行為者の特徴、車のナンバーや行為の行われた場所や日時、持ち去られた物などの情報提供を求めることとし、さらに、(3)市長は、持ち去り行為を行った者に対し持ち去り行為の禁止命令を発し、その禁止命令に違反した者に対しては、20万円以下の罰金に処するとして、刑罰まで定めることとしています。
 しかし、以上のような条例改正案には、以下のとおり、看過できない違憲・違法の問題が含まれております。

(1)持ち去り禁止に関する違憲性・違法性
 先ず上記(1)のとおり、市及び市が指定する者(資源物等の収集業務を市が委託した業者等)以外の者が、ごみステーションに出された新聞紙・段ボール・空き缶・自転車などの廃棄物を持ち去ることは、通常、ホームレスの人々以外には、考えられません。したがって、この条例改正案は、たんにホームレスの人々の持ち去りを禁止するものにほかなりません。このような条例改正案は、ホームレスの人々の生存を極めて危険な状態にさらすものであり、以下に説明するとおり、生存権を保障した憲法25条、ならびに国際人権規約(社会権規約)、生活保護法、ホームレス自立支援法に反するものです。
 憲法25条は、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障しているところ、ホームレスの人々は、既に「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されていない状態となっているのですが、こういった状態がなくならないのは、主に生活保護の運用に関する行政の手法に誤りがあるからです。生活保護法は、憲法25条が保障する生存権を具体化した立法であり、ホームレスの人々もその現在地において保護の対象として予定されておりますが(生活保護法19条1項2号)、そもそも同法は、居宅保護を原則としており、ホームレスの人々についても、要保護性が認められる限り、居宅保護を原則とした生活保護が実施されなければならないはずです。日本も締約国である国際人権規約・社会権規約11条1項が、「生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利」を規定しているのは、これと同じ趣旨を含むと解されます。
 しかし、行政は、ホームレスの人々に対し、ホームレスであることのみをもって生活保護の開始を拒むなどの違法な運用をしてきました。この点については、厚生労働省の平成15年7月31日社援保発第0731001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知でも明らかになっております。
 この点、貴市におかれましては、近年では、憲法その他の法令の趣旨に基づいた生活保護の運用に努力してきておられるところと考えます。しかし、現実には、いまだホームレスの人々が賃貸住宅を借り上げるのには、保証人問題などの高いハードルがあり、居宅保護の原則は十分には保障されていない現状があります。
 このような現状において、ホームレスの人々は、住居その他の生活基盤を持てないため、身なりが整わない、社会的信用がない、ひいては健康状態が損なわれ、職業選択が大幅に制限されおります。また、社会の様々な偏見や差別にさらされながら生活することを強いられており、大変苛酷なものとなっております。
 ホームレスの人々の多くは、このような現状において、空き缶その他の廃品を収集して換金することにより、かろうじて空腹を和らげ、自己の生命をつないでいるのです。平成15年1月から2月にかけて実施されたホームレスの実態に関する全国調査によれば、ホームレスの人々の64・7%が仕事をしており、その主な内訳は「廃品回収」が73・3%となっています。
 このような現状の下で、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(以下「ホームレス自立支援法」と称します。)は、「自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在」することにかんがみ、ホームレスの人々の自立を支援するために、国や地方公共団体等の必要な施策を講ずることなどを定めるために制定されております(同法1条)。
 同法によれば、「ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要」(3条2項)とした上で、地方公共団体が自立支援のための施策の策定と実施の責務を負うこととし(6条)、これに基づき国は「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(平成15年厚生労働省・国土交通省告示1号)を策定しております。この基本方針では、「就業による自立の意思があるホームレスに対して、国及び地方公共団体は、ホームレスの自立の支援等を行っている民間団体との連携を図り、求人の確保や職業相談の実施、職業能力開発の支援等を行うとともに、地域の実情に応じた施策を講じていくことが必要である」とした上で、常用雇用による自立が直ちには困難なホームレスの人々に対して、清掃業務や雑誌回収等の「都市雑業的な職種」の開拓や情報収集・情報提供を行うべきことが明記されています(第3・2(1)・カ)。そして「都市雑業的な職種」の例示として、雑誌回収が挙げられていることから、その中には、当然、より換金しやすい空き缶その他廃品の回収をも含むと解されます。自立支援法が基調とする就労による自立には、ホームレスの人々が空き缶等の廃品の回収業に従事することを支援する施策も含まれると解すべきであり、その策定と実施は地方公共団体の責務となっているというべきです。
 すなわち、今般の廃棄物処理条例の改正案は、貴市が負うべき当該地方公共団体の施策実施の責務を実行しないばかりか、かえって廃品回収業によるホームレスの人々の自立を困難にするものです。
(2)罰則規定に関する違憲性
 貴市は、廃棄物処理条例の改正案の理由を、@「市は、責任をもって家庭の一般廃棄物の処理を遂行していく立場にあることから、市の行う一般廃棄物の処理に対する妨害行為である持ち去り行為の防止に努める必要があります。」とし、またA「持ち去り行為は、市民の方々への迷惑になっていることや分別への協力意欲の低下を招き、ひいては市の一般廃棄物の処理やリサイクルの推進に対する信頼の低下につながることから、市としては、見過ごすことができない状況にあると判断しました。」としています。
 このような改正の理由にも、確かに一理あるでしょう。しかし、こういった理由では、現に、ホームレスの人々の自立の道を断ち、その生存を脅かしてもよいほどの理由にはなりません。@の提案理由については、前述の憲法・条約・その他の法令の趣旨目的の方が利益衡量上も優先することは明らかであり、廃品回収を「妨害行為」と決め付けること自体に無主物先占(民法239条1項)に関する誤解があります。また,Aの提案理由については、すでに廃品回収を生業としているホームレスの人々の労力を活用することや、ごみステーションなどにごみを散らかさないように注意を促すためのたて看板を掲示するなど、より抑圧的でない他の方法によっても一定の成果をあげることができるはずです。貴市におかれましては、前述の憲法・条約・その他の法令の趣旨目的にしたがい、こういった代替策を真摯に検討し推進していくべきです。
 そして、今般の廃棄物処理条例の改正案は、最終的には、廃品等を持ち去った者に対し、罰金20万円の刑罰を科すこととしておりますが、廃品の持ち去りといった極めて軽微な行為に対して、このような刑罰を科すことは、憲法31条が定める罪刑法定主義(刑罰均衡の原則)にも反するものです。また、ホームレスの人々は、通常、資力は全くなく、このような罰金の負担は極めて過酷な負担となることを考えれば、このような規制手段が合理性を欠いていることは明らかです。
 このような規制手段を規定する今般の条例改正案が現実化すれば、ホームレスの人々が自己の生存を確保するための活動さえ萎縮させ、自立を損なうことは明白であり、到底、憲法、国際人権規約その他の法令(生活保護法・ホームレス自立支援法など。)の趣旨目的に合致するものとはいえず、違憲の疑いすら否定できないものです。

結語
 以上により、私たちは、貴市に対し、ホームレスの人々の生活実態と地方公共団体の本来の責務を踏まえ、今般の条例改正案の提出を取り止めることを求めます。
以上


賛同者一覧

 弁 護 士 加藤修(熊本県弁護士会)
 弁 護 士 青山定聖(熊本県弁護士会)
 弁 護 士 板井俊介(熊本県弁護士会)
 弁 護 士 長谷山尚城(熊本県弁護士会)
 弁 護 士 吉田哲也(熊本県弁護士会)
 相 談 員 吉田洋一(熊本クレ・サラ・日掛被害をなくす会)
 相 談 員 高浜登志子(熊本クレ・サラ・日掛被害をなくす会)
 司法書士 山田麻紀子(熊本県司法書士会)
 司法書士 稲本信広(熊本県司法書士会)
 司法書士 村山鉄次(熊本県司法書士会)
 司法書士 野田浩光(熊本県司法書士会)
 司法書士 黒江正志(熊本県司法書士会)
 司法書士 岡村光洋(熊本県司法書士会)
 司法書士 西岡健一郎(熊本県司法書士会)
 司法書士 西岡容子(熊本県司法書士会)
 司法書士 田島賢治(熊本県司法書士会)
 司法書士 井上勉(熊本県司法書士会)
 司法書士 田中千奈(熊本県司法書士会)
 司法書士 島田武典(熊本県司法書士会)
 司法書士 中田誠一(熊本県司法書士会)
 司法書士 山本拓馬(熊本県司法書士会)
 司法書士 後藤俊二(熊本県司法書士会)
 司法書士 立山淳子(熊本県司法書士会)
 司法書士 山田佳代(熊本県司法書士会)
 司法書士 P輝大(熊本県司法書士会)
 司法書士 澤田章仁(熊本県司法書士会)
 司法書士 西澤英之(青森県司法書士会)
 司法書士 伊見真希(千葉県司法書士会)
 司法書士 若鍋敬治(東京都司法書士会)
 司法書士 秋山淳(東京都司法書士会)
 司法書士 古根村博和(神奈川県司法書士会)
 司法書士 荻原世志成(長野県司法書士会)
 司法書士 小澤吉徳(静岡県司法書士会)
 司法書士 外山玲那(愛知県司法書士会)
 司法書士 野ア史生(愛知県司法書士会)
 司法書士 前川一彦(奈良県司法書士会)
 司法書士 西山弓子(奈良県司法書士会)
 司法書士 高原勉(兵庫県司法書士会)
 司法書士 正影秀明(岡山県司法書士会)
 司法書士 余村博樹(島根県司法書士会)
 司法書士 濱田なぎさ(福岡県司法書士会)
 司法書士 大部孝(福岡県司法書士会)
 司法書士 安河内肇(福岡県司法書士会)
 司法書士 徳永慎一(福岡県司法書士会)
 司法書士 柿木高紀(福岡県司法書士会)
 司法書士 奈良田真作(福岡県司法書士会)
 司法書士 渡邉慎一郎(福岡県司法書士会)
 司法書士 三代由美子(福岡県司法書士会)
 司法書士 嶋村啓志(福岡県司法書士会)
 司法書士 谷崎哲也(福岡県司法書士会)
 司法書士 及川修平(福岡県司法書士会)
 司法書士 李漢彦(福岡県司法書士会)
 司法素子 梯輝元(福岡県司法書士会)
 司法書士 福田哲也(福岡県司法書士会)
 司法書士 芝田淳(鹿児島県司法書士会)
 司法書士 是枝真紀(鹿児島県司法書士会)
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【11】南九州税理士会事件の補足−日弁連スパイ活動防止法反対決議事件との比較−

2007/01/25 01:17
 南九州税理士会事件と八幡製鉄政治献金事件の相違点を比較すれば、すぐ「強制団体か任意団体か」という相違点を指摘することができよう。しかし、「強制団体」の一定の行為とその団体の構成員との思想信条が対立した事件は、南九州税理士会事件に限られない。
 南九州税理士会事件と同じく「強制加入団体」について、国家秘密法案に反対する総会決議が弁護士会の目的の範囲内のものであるかが問題となった事件がある(日弁連スパイ活動防止法反対決議事件)。この事件で東京高裁(東京高判1992年12月21日自由と正義44巻2号99頁)は・・・、
 「本件法律案が構成要件の明確性を欠き,国民の言論,表現の自由を侵害し,知る権利をはじめとする国民の基本的人権を侵害するものであるなど,専ら法理論上の見地から理由を明示して,法案を国会に提出することに反対する旨の意見を表明したものであることは決議の内容に照し明らかであり,これが特定の政治上の主義,主張や目的のためになされたとか,それが団体としての中立性などを損なうものであると認めるに足りる証拠は見当たらない」として、本件総会決議は弁護士会の目的を逸脱するものではないと判示している。
 南九州税理士会事件とこの日弁連スパイ活動防止法反対決議事件の相違点として、最も大きな点は、前者の事件における会の行為が「政党・政治家または候補者への政治献金行為」であるのに対して、後者の事件における会の行為が「法理論上の見地から理由を明治して」する法案の反対行動であって、「特定の政治上の主義、主張や目的」のための行為ではない、という点である。
 この二つの事件の違いから分かるとおり、ある団体の一定の行為とその団体の構成員との思想信条が対立した事件の考察